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2022.01.26

シリーズ長井ビジネスチャレンジコンテスト

その1置賜地域を盛り上げる発想法

かいぎさん

長井市では2017年から長井ビジネスチャレンジコンテストを開催しています。目的は「置賜地域に新たな産業を生み出すことで地域経済が活性化し若者が誇りをもって働ける地域へ発展していくことを目指し、若者や移住者の創業や新たな『コト』起こしの促進、地域資源を見直す機会を創出し、地域にチャレンジする雰囲気を醸成すること」(第1回webサイトより)。

主催は(一財)置賜地域地場産業振興センター、共催が長井市、協賛に日本・アルカディア・ネットワーク株式会社、YTS山形テレビ、NTT東日本山形支店、(公社)長井教育会という大々的なビジネスコンテストです。第5回目の開催となる今年のコンテストに、あまねかいぎが潜入してきました。

あまねかいぎが参加している出場チーム「まちけんcheered up by 藝工大應援團 with 天音印」のメンバー

あまねかいぎが参加している出場チーム「まちけんcheered up by 藝工大應援團 with 天音印」のメンバー

どんなコンテストなんでしょうか?

応募者の中から書類審査に勝ち残った12組が、2回のブラッシュアップ合宿を経て、長井市文化会館大ホールでのファイナルイベント(2022年2月26日に開催予定)でプレゼンテーションを実施。そこで各賞が決定されます。

実際に事業化を目指すビジネスプラン部門と、事業化はしないまでも地域の課題を解決できそうな案を出すビジネスアイデア部門があり、ビジネスアイデア部門は“一般枠”と高校生以下限定の“次世代枠”があります。
両部門には、県内外の社会人はもとより全国の大学生チーム、地元の高校生チームも参加しています。私の通う東北芸術工科大学からも何度かファイナルイベントへの出場実績があります。

これまでのファイナリストのプラン・アイデアは、“長井地ビールプロジェクト”や“長井産けん玉を全世界へ”など長井市ゆかりのもの、“看護職による産前産後サポート”など地域を暮らしやすくするものまで多彩です。

長井ビジネスチャレンジコンテストでは毎年様々な案が出ていて、置賜地域を盛り上げようという参加者の熱意がひしひしと伝わってきます

長井ビジネスチャレンジコンテストでは毎年様々な案が出ていて、置賜地域を盛り上げようという参加者の熱意がひしひしと伝わってきます

12月11日に長井市の複合施設TAS(タス)で1回目の合宿が行われました。プログラムは、パワーポイントの使い方やプレゼンテーションの仕方を学ぶ“プレゼン力アップ講義”とマーケティングの手法や考え方を学ぶ“事業アイデア講座”。私や宗川くんはどちらも大学の授業で学んだことがある内容で、「マーケティング」「セグメンテーション」など専門用語がたくさん飛び交うもなんとかついていくことができました。

参加していた高校生のみなさんにも取材をしてみると「パワーポイントの使い方がよくわかった」などの感想があり、実践的な学びを得られたようです。

しっかり話を聞いてメモを取る真面目な高校生。難しい内容だったけどがんばれがんばれ

しっかり話を聞いてメモを取る真面目な高校生。難しい内容だったけどがんばれがんばれ

プレゼン資料は書体や色にもこだわりましょう。こちらはダメな例の一覧。世の中のプレゼン資料ではこういうものもたくさんあるそう

プレゼン資料は書体や色にもこだわりましょう。こちらはダメな例の一覧。世の中のプレゼン資料ではこういうものもたくさんあるそう

マーケティングより自分が楽しむこと優先

今回、私は“まちけん cheered up by 藝工大應援團 with 天音印”の一員として参加しながら、潜入取材をすることになりました。チームのリーダーまちけんこと間地謙太(まち・けんた)さんは神奈川県横浜からご参加。神奈川・東京を中心に、おもしゃい活動をたくさんされています。私がこのコンテストのお話をしたら「じゃあ何か出してみっかな~」と言って見事ファイナリストに。流石です。

「ファイナルプレゼンテーションをするなら地元に精通していないと難しい」と私を助手にご指名くださり、芸工大デザイン工学部コミュニティデザイン学科2年生の宗川隼人(そうかわ・はやと)くんもお誘いして3人でがんばることにしました。

間地謙太さんは、あまねかいぎが高校時代からお世話になっている方。「1秒に1つ企画を考えることができる」(笑)という能力の持ち主です

間地謙太さんは、あまねかいぎが高校時代からお世話になっている方。「1秒に1つ企画を考えることができる」(笑)という能力の持ち主です

「置賜地域や山形県は若い人が住み続けたいと思うまちづくりを本気でしなきゃ、若者流出とか人口減少とかもう待ったなしでしょ。自分でまちづくりに参加したら当事者意識が芽生えて住み続けたくなるよね。“次世代枠”はそれが狙いなんじゃないの?」間地さんは、地域の現状とコンテストの目的をこのように分析していました。

「外様の自分がたった1つビジネスプランを事業化するよりも、高校生や大学生に『企画をするっておもしろい』って感じてもらって、ゆくゆくはたくさんの案が地元の人から出てくるようにした方がいい。『魚を与えるのではなく魚の釣り方を教えよ』と一緒。教えるなんておこがましくて言えないけど、『一緒にバカやって楽しもうよ』とは言えるしできる。それで2人を誘ったのよ。楽しんでどんどん案が溢れてくる感覚を経験したら病みつきになってやめられなくなっちゃう」。ご自身がビジネスプラン部門でなく、ビジネスアイデア部門を敢えて選んだ理由をそう説明されました。自分の案が入賞するかではなくて、置賜地域や山形県の未来のことを考えているわけですね。すごい。

「マーケティングなんて知ったこっちゃないのよ。他の人の事よりもまずは自分が楽しむこと最優先。考えているときに自分がワクワクしないようなものには人を引きつける力はないよ。特に高校生や大学生はそこから始めないと辛いだけ。続かないよ。楽しんだ人の中から才能のある人がちょっと出てくる。そういうもんでしょ。まずは難しい事抜きで、楽しんでもらわないとね」。関わる人が楽しむことがスタート。コンテスト応募案も、間地さんのコンセプトはそこが一貫しています。

【学生会議】「若い人の視点で斬新な案を」に求められたいこと

「若い人の視点で斬新な案を」と高校生や大学生に求められることが多々あります。私も何度もそう言われたことがあります。でも、やり始めてみると結局は大人の人達が敷いたレールに乗せられそうになるんです。原因は2つあると思います。1つは若い人の実力が足りないこと。もう1つは大人の人達の懐の深さと我慢の問題です。

コンテストや会議では、何か形に残さないと実績を作ることができません。大人の力でとりあえず形にして成果や実績っぽいものにしたくなってしまう。若い人たちも自分達の実力不足を感じるし、なんとなく大人の人達には逆らえずそれに引きずられていく。という構図が見られます。しかし長い目で見たときに、このやり方では本当にやる気があって斬新な案を出せる若い人は増えないと思います。

大学の授業でもしばしば感じることですが、リモート画面の向こうから“正しい事”を言われてもまったく心に響きません。大人も一緒になって“おもしゃいこと”をやって、一緒に失敗してみんなで笑うことからスタートすることで、まちづくりのための案をみんなで気軽にどんどん出そうという空気が作られていくと思います。まずは自分が心の底から楽しむ。それからブラッシュアップ。これを繰り返して実力が付きます。楽しむ前にブラッシュアップは本末転倒。肝に銘じようと思います。そして大人の方々には若い人達に期待するのはわかりますが、焦って結果を求めるのではなく、どんな案でもおもしろがる気持ちを持ってもらいたいです。

2022年1月15日に第2回目の合宿がありました。年末年始で楽しむ原点を取り戻して、高校生のみんなにも縮こまらないで伸び伸び考えられるようサポートできるくらい余裕を持ちたいと思います。

シリーズその2の記事に続きます。お楽しみに!

この記事を書いた人
斎藤天音

斎藤天音
Profile 山形学生会議編集長。山形県白鷹町出身。東北芸術工科大学 芸術学部美術科総合美術コースに在籍しながら個人事業「天音印」を開業。ディレクター、アーティスト、クリエーターとして精力的に活動中。
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