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2022.05.12

山形のおいしさとやさしさを幾重にも重ねて―米粉100%使用のバウムクーヘン専門店

こおどり庵

2022年3月、南陽市赤湯のイオンタウン内にオープンし、瞬く間に行列店となり話題を集めている「こおどり庵」。山形県産つや姫の米粉を使用したバウムクーヘンとはどのようなもので、どんなおいしさなのか、同店を運営するエニシオ株式会社 代表取締役の難波美香さんを山形会議が訪ね、お話を伺ってきました。

パッケージを飾るのは、「こおどり庵」のマスコットキャラクターであり木の妖精の『コードリーくん』。可愛らしい姿に、思わず顔がほころびます

パッケージを飾るのは、「こおどり庵」のマスコットキャラクターであり木の妖精の『コードリーくん』。可愛らしい姿に、思わず顔がほころびます

ドイツ語の“バウム”(Baum)は樹木を意味する通り、木を基調としたおしゃれな外観が目を引きます。ガラス窓越しには焼き立てのバウムクーヘンが!たちまち食欲をそそられます

ドイツ語の“バウム”(Baum)は樹木を意味する通り、木を基調としたおしゃれな外観が目を引きます。ガラス窓越しには焼き立てのバウムクーヘンが!たちまち食欲をそそられます

ご縁を繋いだ、一つのバウムクーヘン

県内初の米粉バウムクーヘン専門店として誕生した「こおどり庵」。すべてのはじまりは難波さんと、とあるバウムクーヘンとの出会いからでした。
「山形に遊びに来てくれた福島の友人から、“ごえんバウム”というお菓子をお土産にいただいたんです。五円玉のイラストがあしらわれたパッケージの中には、何個かのバウムクーヘンの詰め合わせが入っていました」

“ごえんバウム”は福島市松川町に本店を置く『バウムラボ樹楽里』が製造販売する、米粉を使用して作られるバウムクーヘン。当時からさまざまな取引先を訪問する機会が多くあったという難波さんは、「こういうお菓子が地元の山形にもあって、お客様先にお持ちすることができたら素敵だな。ますますご縁を広げることができるんじゃないかな」と、その時感じたのだと言います。

「エニシオ株式会社の社名は、縁(えにし)からとっているんです」と難波さん。菓子製造・販売を手掛けるのは実は今回が初めて

「エニシオ株式会社の社名は、縁(えにし)からとっているんです」と難波さん。菓子製造・販売を手掛けるのは実は今回が初めて

それから暫くして、再び難波さんに運命の出会いが訪れます。それは、難波さんが知人の方からの薦めで初めて食べたという『平飼い米っ子たまご』でした。
「とにかく普通の卵と全然違うから、卵かけご飯にして食べてみてと。私はもともと生卵が得意じゃなかったのですが、せっかくいただいたので食べてみたら本当においしくて。卵への苦手意識がウソのようになくなった瞬間でした」と難波さんは目を輝かせます。

山形県置賜地方において、地場生産・地場消費の取り組みを広げ持続可能な社会の実現を目指そうと設立された「協議会たまごの会」。その生産者グループ手によって平飼いされたのが『平飼い米っ子たまご』です。地域で栽培されたお米と米ぬかを主な飼料として与え、地域循環型農業の一部となっています

山形県置賜地方において、地場生産・地場消費の取り組みを広げ持続可能な社会の実現を目指そうと設立された「協議会たまごの会」。その生産者グループの手によって平飼いされた鶏が産むのが『平飼い米っ子たまご』です。地域で栽培されたお米と米ぬかを主な飼料として与え、地域循環型農業の一部となっています

「この閉塞感のあるコロナ禍だからこそ、新しい事業をやってみたいという思いはずっとありました。今はマスクで顔が半分しか見えないし、若い人は皆うつむいてスマホばかり見ているような時代だけど、おいしいものを食べる時だけは誰もが笑顔になりますよね。せっかくさまざまなご縁をいただいたので、みんなが元気になれるようなお菓子を今度は自分の手で作ってみたい。そう思い、お店のオープンを決めました」

地元を元気にしたいという思いから、難波さんがバウムクーヘンの原料に選んだのは、南陽市と高畠町の農家さんが生産するつや姫の米粉。そして使用する卵はもちろん、難波さんが卵のおいしさを知ることができた『平飼い米っ子たまご』です。こうして難波さんのもとにさまざまなご縁が繋がり、「こおどり庵」のバウムクーヘンは誕生したのです。

店内からはバウムクーヘンの製造工程を覗くことができます。これは子どもたちも大喜び!

店内からはバウムクーヘンの製造工程を覗くことができます。これは子どもたちも大喜び!

大きな窓から陽光が差し込む、明るい店内。開店間もない頃は、閉店時間前での完売が続出し購入制限を設けなければいけない事態に。「当時はお客様にご不便をおかけしましたが、スタッフの生産力も上がってきましたし今は混雑も落ち着いてきました」と難波さん

大きな窓から陽光が差し込む、明るい店内。開店間もない頃は、閉店時間前での完売が続出し購入制限を設けなければいけない事態に。「当時はお客様にご不便をおかけしましたが、スタッフの生産力も上がってきましたし今は混雑も落ち着いてきました」と難波さん

安心できる材料でおいしさを追求

こおどり庵のバウムクーヘンの特徴は、何と言っても100%米粉使用ならではのふわふわとした食感。お客様から、「今まで食べていたバウムクーヘンとは全く別物」との声をいただくことも多いのだそう。

一層ずつ丁寧に焼き重ねられた生地のふんわりとした口当たりに、思わず取材班もバウムクーヘンの概念がくるっとひっくり返りました(写真提供:こおどり庵)

一層ずつ丁寧に焼き重ねられた生地のふんわりとした口当たりに、思わず取材班もバウムクーヘンの概念がくるっとひっくり返りました(写真提供:こおどり庵)

バウムクーヘンは現在プレーン、ショコラ、玄米の3種類の味わいが楽しめます。それぞれS、M、ミニの3種類のサイズから選べるのも嬉しいポイント(写真提供:こおどり庵)

バウムクーヘンは現在プレーン、ショコラ、玄米の3種類の味わいが楽しめます。それぞれS、M、ミニの3種類のサイズから選べるのも嬉しいポイント(写真提供:こおどり庵)

玄米を使用しためずらしいバウムクーヘンも、やはり山形県産つや姫の玄米を原材料としています。ローストによる香ばしさと黒糖使用による深いコクがありながら、意外にもクセがなく子どもも喜ぶおいしさです

玄米を使用しためずらしいバウムクーヘンも、やはり山形県産つや姫の玄米を原材料としています。ローストによる香ばしさと黒糖使用による深いコクがありながら、意外にもクセがなく子どもも喜ぶおいしさです

カカオの濃厚さと軽やかな食感のバランスが絶妙なショコラはフランス産のチョコレートを使用。「通常お菓子にはベルギー産のチョコレートが使われることが多いのですが、実際に作って比べてみたら格段に風味がマッチしたのがフランス産」と、チョコレート選びにも難波さんのこだわりが

カカオの濃厚さと軽やかな食感のバランスが絶妙なショコラはフランス産のチョコレートを使用。「通常お菓子にはベルギー産のチョコレートが使われることが多いのですが、実際に作って比べてみたら格段に風味がマッチしたのがフランス産」と、チョコレート選びにも難波さんのこだわりが

オンラインショップではさまざまなセットも販売中。こちらは〈プレーン〉M+ミニ4個セット(税込3,407円)。このギフトをいただけたら、開けたとたんにテンションが上がってしまいますね(写真提供:こおどり庵)

オンラインショップではさまざまなセットも販売中。こちらは〈プレーン〉M+ミニ4個セット(税込3,407円)。このギフトをいただけたら、開けたとたんにテンションが上がってしまいますね(写真提供:こおどり庵)

すべてのバウムクーヘンに使用している『平飼い米っ子たまご』。白身がぷっくりと盛り上がり、黄身も箸でつまめるほどの弾力。レモンイエローの色は、お米を食べている鶏から生まれた証とのこと(写真提供:こおどり庵)

すべてのバウムクーヘンに使用している『平飼い米っ子たまご』。白身がぷっくりと盛り上がり、黄身も箸でつまめるほどの弾力。レモンイエローの色は、お米を食べている鶏から生まれた証とのこと(写真提供:こおどり庵)

「ある日、届いた卵の黄身がいつもより黄色く感じたことがあったんです。不思議に思い生産者の方に聞いてみると“ああ、最近柿の皮を食べさせたからだな”と」。鶏には化学飼料は与えずに、できる限り地元で作られた安心できる飼料を与えたい。生産者の方の思いが垣間見えたそんなエピソードを難波さんは教えてくださいました。

「若い世代の方と話した時、平飼いとケージ飼い鶏の違いすら知らない事実に衝撃を受けたことがありました。子どもたちや、これから赤ちゃんを産む若い世代の方々にはとりわけ、食品が作られる環境や、“安全な食”についてもっと興味を持ってほしい。そのために小さなことからでも発信していきたいと思います」。そう話す難波さんには、実はゴールデンレトリバーのブリーダーという一面も。卵を産む鶏にストレスのない環境を、と願うのも元より動物愛に溢れた彼女ならではの視点からなのかもしれません。

いつか手土産やお土産の定番になることを夢見て

これまでは販売やテイクアウトがメインだった「こおどり庵」ですが、今後はカフェスペースもオープンする予定です。

「カフェスペースでは、ゆくゆくは米粉のパンケーキも提供したいと思っています。パンケーキにソフトクリームや生クリームを添えて、そこに季節のフルーツをトッピングするのもいいですね。ぶどうの印象が強い南陽市ですが、実はりんごも特産なんですよ」

店内の一角に設けられたカフェスペース。ケヤキの古材をリメイクしたテーブルなど、随所にこだわりが光ります

店内の一角に設けられたカフェスペース。ケヤキの古材をリメイクしたテーブルなど、随所にこだわりが光ります

現在はテイクアウトで販売中のソフトクリーム(税込357円)も今後はカフェスペースで提供可能に。後を引く濃厚さともっちりとした舌触りに取材班も大興奮!県内で2台しか導入されていないソフトクリームメーカーを使用しているのだとか。中には一日に2回リピートするお客様もいらっしゃるというほどの人気ぶり

現在はテイクアウトで販売中のソフトクリーム(税込357円)も今後はカフェスペースで提供可能に。後を引く濃厚さともっちりとした舌触りに取材班も大興奮!県内で2台しか導入されていないソフトクリームメーカーを使用しているのだとか。中には一日に2回リピートするお客様もいらっしゃるというほどの人気ぶり

プライベートでは3人のお子さんの母である難波さん。店名を決める時には娘さんが相談に乗ってくれ、「こおどり庵」での決定を後押ししてくれたのだそう

プライベートでは3人のお子さんの母である難波さん。店名を決める時には娘さんが相談に乗ってくれ、「こおどり庵」での決定を後押ししてくれたのだそう

若手スタッフの方々が多く活躍するこおどり庵。「熟練の職人や販売のエキスパートがいるわけではないので、みんなで手探りの毎日ですが、それが楽しい」と微笑む難波さん。挑戦は、まだまだ始まったばかりです。「地元の方がどこかへ遊びに行くときに“こおどり庵のバウムクーヘン持っていこうか”って思ってくれたり、ここは観光地なので、赤湯温泉に来た方がお土産に買ってくれたりするのが定番になったら、それ以上に嬉しいことはないですね」。

さまざまなご縁から誕生し、そして今も地域の自然と農業とを繋ぎ続けている「こおどり庵」のバウムクーヘン。今日も厨房で、じっくりと焼き上がりの時を待っていることでしょう。くるくる、ふわふわと、木の年輪のように幾重にも重ねた山形のおいしさと、やさしさをあなたのもとへ―。

「おいしくて小踊りしたくなるバウムクーヘンを」との思いから命名された「こおどり庵」。店内に飾られているコードリーくんのオブジェは、難波さんのご友人からの手作りのプレゼント

「おいしくて小踊りしたくなるバウムクーヘンを」との思いから命名された「こおどり庵」。店内に飾られているコードリーくんのオブジェは、難波さんのご友人からの手作りのプレゼント

こおどり庵

山形県南陽市赤湯 3077-1(イオンタウン南陽敷地内)

こおどり庵

この記事を書いた人
あかかいぎさん

あかかいぎさん
Profile 山形会議のキュレーター。山形市出身。大学で県外に出るも、就職で山形に戻る。変な文房具とパン、魚卵と臓物が好き。似ていると言われる芸能人は櫻井翔と餅田コシヒカリ。
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