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2021.07.28

しょうゆとみそのスイーツ!? 意外性をおいしさに変えたカフェ&ショップ

蔵膳屋(くらぜんや)

100種類以上のオリジナル商品が並ぶショップ。右奥は併設のカフェ

100種類以上のオリジナル商品が並ぶショップ。右奥は併設のカフェ

山形市十日町の大通り沿いに建つお店。入口には「蔵膳屋」の暖簾が

山形市十日町の大通り沿いに建つお店。入口には「蔵膳屋」の暖簾が

ダシ入りしょうゆ「味マルジュウ」で山形県民にお馴染みの株式会社丸十大屋(以下、丸十大屋)。明治中期から続くしょうゆ・みそ醸造の老舗です。この歴史ある蔵造りの建物の隣にあるのが、直営店「蔵膳屋」。本社とは対照的にガラス張りのスタイリッシュな店構えが目を引きます。今回は蔵膳屋を訪ね、人気の和スイーツやお店づくりへの思いなど、代表取締役の佐藤利右衞門さんにお話を伺ってきました。

天保15年(1844年)、紅花商として創業し、明治中期から醸造業を営んでいる丸十大屋。白壁の蔵や暖簾のかかった門構えなど、歴史を感じる佇まいは老舗の貫禄(写真提供:丸十大屋)

しょうゆとみその会社なのにスイーツ。そのギャップがミソ

醸造業を営みながら、ちょっとユニークな「AMAI MARUJYU」というスイーツブランドを立ち上げ、しょうゆやみそをアレンジしたスイーツを提供している同社。どうして“スイーツ”を作ろうと考えたのでしょうか。その理由を佐藤さんに尋ねると、ヒントは京都のお茶屋さんにあったといいます。

「京都のお茶屋さんでは茶葉の売れ行きが思わしくなかったとき、飲料メーカーと組んでペットボトルのお茶を販売したり、スイーツに特化したり、様々な工夫を凝らしてうまくやってらっしゃるなと思いました。茶葉が売れないから新たな試みをしようという、一つの発想の転換ですよね。しょうゆやみそといった基礎調味料の需要が減っている中で、スイーツという別分野での可能性を試してみたいという思いもありました」

みたらしにみそ、これが意外とプリンに合うんです

お店の1番の売れ筋は「しょうゆシュークリーム」。カスタードクリームに減塩しょうゆが入っていて、味もしょっぱすぎず、ほのかにしょうゆの風味を感じる濃厚さがクセになります。

「しょうゆシュークリーム」(税込275円)は、注文してからカスタードクリームを生地の中へ。しょうゆ入りのカスタードクリームは塩気と甘みのバランスが絶妙。一度食べたらハマってしまう人も多くリピート率高し!(写真提供:丸十大屋)

「しょうゆシュークリーム」(税込275円)は、注文してからカスタードクリームを生地の中へ。しょうゆ入りのカスタードクリームは塩気と甘みのバランスが絶妙。一度食べたらハマってしまう人も多くリピート率高し!(写真提供:丸十大屋)

2番目に人気なのは「プレミアムプリンのみたらし」。プリンは「みたらし」、「みそ」、「こうじ」、「季節のプリン」の4種類のフレーバーから選べ、あれもこれもと迷ってしまうのも楽しいです。「みたらし」と「みそ」は、プリン1個に卵黄をまるまる1個使ったぜいたくさ。卵は米沢市の山田鶏卵の紅花たまごを使っています。カラメルの部分にそれぞれ、みたらし、みそを使っていて、わずかに感じる塩加減がちょうど良いアクセントに。「こうじ」は、山形県産つや姫の米こうじを甘酒にして、卵白と合わせて作ったプリン。砂糖を使わず甘酒の優しい甘さが生かされています。「季節のプリン」もぜひ押さえておきたいところ。取材にお邪魔したときは「乃し梅本舗 佐藤屋」の銘菓“乃し梅”とコラボした「乃し梅こうじプリン」が販売されていました。期間限定のプリンでこれまでで一番売れているのがこの商品とのこと。春は桜や抹茶、初夏は桜桃、夏はマンゴーなど、季節の味わいを感じられる限定プリンも見逃せませんね。

人気の「プレミアムプリン」。左から「みそ」、「みたらし」、「こうじ」、「乃し梅こうじプリン」(各 税込385円)。こんな手土産をいただいたら気分も上がりそうですね

人気の「プレミアムプリン」。左から「みそ」、「みたらし」、「こうじ」、「乃し梅こうじプリン」(各 税込385円)。こんな手土産をいただいたら気分も上がりそうですね

夏になると出番が多くなる「ソフトクリーム」。しゅうゆ、ミックス、バニラの味が選べます(各 税込385円)。トッピングに丸十大屋のおせんべいをパラパラとかけて、ひと味違った食感を楽しむのもおすすめです

夏になると出番が多くなる「ソフトクリーム」。しゅうゆ、ミックス、バニラの味が選べます(各 税込385円)。トッピングに丸十大屋のおせんべいをパラパラとかけて、ひと味違った食感を楽しむのもおすすめです

蔵膳屋を、新しい商品を発信するショールームへ

直営店の蔵膳屋がオープンしたのは2018年10月のこと。以前は本社の建物の玄関先で商品を販売していましたが、門があり、暖簾があり、その奥で販売していても、お客様がなかなか来なかったそう。「商品が増えていくにつれて、これらの商品を消費者の皆さんの目に留めていただきたいと考え、ショールーム的なものや、飲食ができるスペースをつくりたいという思いがずっとありました」と佐藤さん。

スイーツメニューだけでなく、オリジナルのフードメニューも楽しめるのが蔵膳屋の魅力。カフェでいただける山形牛を使ったランチや、ショップで購入できる山形牛のレトルト商品にも注目です。

「家庭で料理をする方が減り、しょうゆやみそといった、いわゆる基礎調味料の消費が減っています。代わって、即席の味噌汁やめんつゆなどの加工品が伸びている現状です。それなら、すぐ食べられる、温めて食べられる加工品を作ろうと、パウチ加工もできる設備を導入しました。蔵膳屋の建物の3分の2がパウチの工場となっています」

山形牛の旨みをぎゅーっと凝縮。こだわりが光るカレーライス

「パウチで何をやるかといったら、すぐ思いつくものはカレーじゃないですか」と笑顔で話す佐藤さん。カレー好きが高じて、全国を食べ歩いたこともあるといいます。
「山形らしいおいしさをお客様に知っていただきたいと、山形牛に限定したんです。ここの工場でカレーのパウチを作るのだから、イートインでカレーも提供しましょうという流れでランチも始めました」

「カレーライス」(税込770円)。お好みで甘口・辛口を選べます。どちらも試したい方はぜひ「あいがけカレーライス(税込880円)」を。15種類のスパイスを使い、肉はとろけるまで煮込んでほぐし肉に。ごはんは山形県産つや姫。「ほぐし肉なので、ごろんとした大きな肉はないのですが、それでも肉の旨みが十分に出ています」(写真提供:丸十大屋)

「カレーライス」(税込770円)。お好みで甘口・辛口を選べます。どちらも試したい方はぜひ「あいがけカレーライス(税込880円)」を。15種類のスパイスを使い、肉はとろけるまで煮込んでほぐし肉に。ごはんは山形県産つや姫。「ほぐし肉なので、ごろんとした大きな肉はないのですが、それでも肉の旨みが十分に出ています」(写真提供:丸十大屋)

通りを望むイートインスペースは、明るい陽射しが差し込む開放的な雰囲気(写真提供:丸十大屋)

通りを望むイートインスペースは、明るい陽射しが差し込む開放的な雰囲気(写真提供:丸十大屋)

佐藤さんの一番のおすすめを尋ねると「山形牛ビーフシチューライス」との答え。「山形牛がごろっと入っているんですよ。1,540円(税込)と高いんですけど。輸入ビーフならもっとごろっとした肉を入れられて、なおかつ安い。ところが、和牛の脂の旨さは違うんです。山形牛は特においしいと思います」

写真は、手間暇かけたフォンドヴォーに、生クリームを加えてじっくり煮込んだ「山形牛ビーフシチュー」。ランチで楽しめる「山形牛ビーフシチューライス」は税込1,540円。(写真提供:丸十大屋)

写真は、手間暇かけたフォンドヴォーに、生クリームを加えてじっくり煮込んだ「山形牛ビーフシチュー」。ランチで楽しめる「山形牛ビーフシチューライス」は税込1,540円。(写真提供:丸十大屋)

すべての商品が揃うショップ、新商品に出会えるかも

蔵膳屋では、スイーツやカレーなどの食事のほかにも、定番商品はもちろん、しゅうゆやみそを使ったオリジナルのタレやつゆ、レトルト食品など、スーパーには並ばない100種類以上の商品が揃います。

「蔵膳屋は、新商品を出したときに一番に発信できる場所。Webと連動させて告知をしていきたいですね。商品のショールームとして、新商品を販売したときにお客様の反応を直に感じられるようにしていきたいです。しょうゆやみその基礎調味料としての役割は、残念ながら今後も減り続けるのではないかという危惧があります。ですから、例えば、手間をかけずに食べられるようなお惣菜や具入りのつゆなど、付加価値をつけた加工品の開発にこれからも力を注いでいきたいですね」

「味マルジュウ」などの定番商品をはじめ、オリジナルのタレやつゆもずらり。山形牛をぜいたくに使ったビーフシチューなどのレトルトパウチは、パッケージも素敵でギフトにもぴったりです。減塩商品にも力を入れ、“かるしお※認定”を受けた食塩分30%カットの減塩みそ「無添加みそ地蔵・減塩」もリニューアル販売しています。 ※撮影時はマスクを外していただいております

「味マルジュウ」などの定番商品をはじめ、オリジナルのタレやつゆもずらり。山形牛をぜいたくに使ったビーフシチューなどのレトルトパウチは、パッケージも素敵でギフトにもぴったりです。減塩商品にも力を入れ、“かるしお※認定”を受けた食塩分30%カットの減塩みそ「無添加みそ地蔵・減塩」もリニューアル販売しています。 ※撮影時はマスクを外していただいております

※“かるしお”…『しおをかるく使っておいしさを引き出す』減塩の新しい考え方。国立循環器病研究センターが、減塩基準だけでなく、美味しさと栄養のバランスなど厳しい審査をクリアした商品を認定。

芋煮のたれは秋の限定販売から通年商品にしたところ、県外から好評とのこと。6月からは芋煮のたれ みそ味も販売

芋煮のたれは秋の限定販売から通年商品にしたところ、県外から好評とのこと。6月からは芋煮のたれ みそ味も販売

以前は百貨店のバイヤーをしていたという佐藤さん(写真左)。常にあらゆる方面へアンテナを張り、目を向けている姿勢が印象的でした

以前は百貨店のバイヤーをしていたという佐藤さん(写真左)。常にあらゆる方面へアンテナを張り、目を向けている姿勢が印象的でした

丸十大屋には1844年の創業当時からの蔵が5つあり、今でも3つの蔵を使っています。昔は蔵に住み込みの方がたくさんいて、しょうゆでもみそでも一番いいところを食べるのは住み込みの方だったのだそう。 “蔵人の御膳” がおいしいものの代名詞だったことから、“一番おいしいものを”との想いを「蔵膳屋」の店名に込めたといいます。

しゅうゆやみそが今度はどんな商品へと形を変えて登場するのか―これからの展開がとても楽しみです。ほかのお店にはないオリジナル商品が揃う蔵膳屋。ここなら、あなたの“一番おいしいもの”に出会えるかもしれません。

蔵膳屋

山形市十日町三丁目10番1号

蔵膳屋

この記事を書いた人
そらいろかいぎさん

そらいろかいぎさん
Profile 山形会議のキュレーター。寒河江市出身。マイペースそうに見えるが、どうやら見えないところで人並に緊張しているポーカーフェイス。某ネズミのキャラに似ているとの声も。
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