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2021.12.09全国の孫たちへ—。かむてんが届ける故郷・新庄の魅力
山形県新庄市イメージキャラクター かむてん
新庄市内の田園風景と奥羽山脈をバックに(画像提供:新庄市商工観光課)
こちらの記事は2021年12月時点の情報です。かむてんのtwitterアカウントは2022年11月をもって更新を終了しており、現在かむてんは当時と異なる活動を行っています。
今や日本全国に溢れかえり、その数はゆうに500を超えると言われる「ご当地キャラクター」。その中でも、ひと際異彩を放つ存在が、新庄市のイメージキャラクター「かむてん」です。鋭い眼光に豊かな白髪と白髭、全身黄色の山伏装束。かわいいご当地キャラが多い中、おじいちゃんという個性的なルックスは言わずもがな、写真集の出版や公式ファンクラブを設立するなど、他に類のない取り組みでも注目を集め続ける、かむてんの想いや素顔に迫りました。
インタビュー会場へ現れたかむてん。チャーミングな登場に思わず沸き立つ取材班を、面白そうに眺めていました
齢1200(くらい)にして今なお現役!故郷・新庄市の広告塔として活躍
山形県新庄市は、実は全国有数の民話の宝庫。市の北東に位置する神室山(かむろさん)は、古くから山岳信仰があり、天狗が住んでいるという言い伝えが残されてきました。かむてんはそんな伝説の「神室天狗」をモデルに、1994年、「昔かたりのきこえるみち」づくり事業のイメージキャラクターとして誕生。その翌年、新庄市イメージキャラクターに就任しました。
「わしの生みの親は、『HUNTER×HUNTER』や『幽☆遊☆白書』、『レベルE』などを手がける新庄市出身の漫画家・冨樫義博(とがしよしひろ)先生なんじゃ。すごいじゃろ!」と、のっけからドヤ顔炸裂のかむてん。冨樫先生の作品は、もちろんいずれも大好きだそうです。
当初は商店街振興のシンボル的役割がメインだった「かむてん」。天狗らしい山伏衣装に高い鼻、赤い顔が特徴的。名前は公募で決定しました
今や全国各地のイベント会場でも「じぃちゃーん!」と声援をもらえるほどに知名度を上げた、かむてん。しかし数年前までは、本来ご当地キャラクターが担うべき「全国に向けたPR活用」が進まず、限定的な範囲での活動が目立ちました。再出発のきっかけとなったのが、2017年から始まった「イメージキャラクターブランディング事業」。かむてんのキャラクター性の確立と情報発信のツールとしての機能を強化することで、新庄市の魅力を全国に広める目的で取り組みがスタートしました。以降、かむてんは全国区のイベントへも積極的に参加するように。さらには公式Twitterも開設します。
「わしの活動をきっかけに新庄市を知ってくれたり、全国からわしに会いに来てくれたりする孫(ファン)たちが徐々に増えていったんじゃ。…まあ、わしがひとたび本気を出せば、こうなることはわかっていたぞい!」
勢いづいたかむてんはもう誰にも止められません。2019年には、なんと写真集「かむてんフォトブック」まで発行してしまいます。(発行/新庄市商工観光課)
2019年4月に出版された「かむてんフォトブック」。新庄市内の美しい四季折々の風景から撮りおろしのかむてんプライベート写真まで収録した贅沢な一冊となっています。特にシャワーシーンは必見(画像『かむてんフォトブック』より)
フォトブックの仕掛人であり、企画からデザイン、アテンドまでを一手に担ったのがアートディレクター・高橋諒さん。「イメージキャラクターブランディング事業」スタート時からスタッフとしてかむてんを支え続ける、右腕的存在です。
「新庄市の魅力を伝える観光パンフレットが他にいくつもありますから、同じようなものを作っても意味がないと思いました。観光や地方に今まで興味がなかった方にも手に取ってもらえるように、あくまでかむてんの面白い写真集という体裁にこだわり抜き、巻末にはかむてんの独占インタビューも収録。それっぽくしたかったので贅沢に4ページも割きました(笑)」
全国のイベントや新庄市内の公共施設・スーパーなどで無料配布されたこのフォトブックですが、そのクオリティの高さとマニアックさが話題に。配布後すぐに在庫切れとなり、増刷までするほど話題となったそうです。(※現在は配布終了しています。)
新庄市ご出身で、東京のデザイン事務所勤務を経てUターンした経歴を持つ高橋さん。2017年12月から翌年2月まで開催された「冨樫義博HUNTER×HUNTERネーム展」のビジュアルや、併せて企画されたかむてんの街歩きマップなど、これまでかむてん関連の企画をいくつも手掛けてきました
かむてんワールド全開のTwitterにもご注目!
自由奔放で茶目っ気たっぷりなおじいちゃん天狗。現在のかむてんのキャラクターを盤石なものにする上で、大きく貢献したのが公式Twitterによる情報発信です。開設は2017年と県内のほかの公式ご当地キャラクターたちに比較すると後発でありながら、順調にフォロワー数を増やし続けている、かむてん。開設当初から一貫して新庄市の認知拡大を主目的に投稿を続けてきました。投稿の中身を覗いてみると、まさに“かむてんワールド”全開です。
観光地・名産品・イベントの紹介にとどまらず、新庄市に興味をもってもらうためのきっかけづくりを担う、かむてんのTwitter投稿。「攻めているのにネットリテラシーも高い」との声も多くあり、ユニークで人間味溢れる(天狗だけど)つぶやきが人気を集めます
フォロワーや他のご当地キャラクターとのTwitter上での交流も大きな見どころの一つ。その慕われぶりは、もはや“国民のおじいちゃん”と呼ぶべき存在。さらにかむてんが描く絵の上手さにも定評が。さすが漫画家が生みの親!
かむてんに関するツイートのチェックも細目に行い、ファンへのレスポンスもできる限り欠かしません。「大変じゃないかって?感じたことないのぅ。人気者の宿命じゃよ☆」
かむてんにどんなことを意識して投稿をしているのか尋ねてみたところ、「新庄市のことを知らない人は全国にたくさんおるのじゃ。一見するとただのネタのようなわしのツイートも、それがきっかけで新庄市を知ってもらうことにつながる場合も多い。情報拡散力とアクティブユーザー数に優れたトゥイッターという媒体特性を最大限に活用することを常に意識しておるよ」と妖怪らしからぬ回答。
立場はあくまでも新庄市公式アカウントであるかむてん。「基本的にはかむてんにお任せしていますが、情報の正確さや公平性、プライバシーの取り扱いなど、基本的な立ち振る舞いには注意を払ってもらえるよう、スタッフもバックアップしています」と話すのは、新庄市商工観光課の森達哉さん。森さんをはじめ周囲のスタッフの方々がきちんと目を光らせてくれているからこそ、かむてんは安心してのびのびと投稿ができているのかもしれませんね。
2020年に商工観光課に異動になるや否や「かむてん事業担当」を拝命したという森さん。高橋さんと二人三脚でかむてんを支え続ける、かむてんの頼もしいパートナーです。「かむてん事業は新庄市のことを市外・県外にPRできる最も効果が大きい事業の一つだと捉えています」と熱っぽく語ります
かむてんが推す、新庄の観光スポット
故郷・新庄を愛してやまないかむてんに、おすすめの観光スポットや特産品について尋ねてみました。
ミュージアムの一角、自由に読める漫画コーナーで漫画を読み耽るかむてん。『HUNTER×HUNTER』のほか、冨樫作品も豊富 ※写真は過去のものを含みます(画像提供:新庄市商工観光課)
「新庄市は多くの漫画家さんを輩出していることでも知られておる。サイン色紙や原画(いずれも複製)の展示など、他では見られないレアな品も。新庄市に来たらまずは訪れてほしい、お宝満載のミュージアムじゃ!」と鼻息荒く語るかむてん。他にも次々と観光スポットを紹介してくれました。
センターでは新庄まつりの優秀山車2台を常設展示しています(画像『かむてんフォトブック』より)
「夏の恒例行事、ユネスコ無形文化遺産である『新庄まつり』は江戸時代から260年以上もつづく伝統行事。『新庄ふるさと歴史センター』では歴史資料や山車が見られ、一年中新庄まつりを感じることができるスポットじゃ」
・本合海(もとあいかい)と最上川
本合海からの眺めは、「おくのほそ道の風景地 本合海」として国指定名勝に指定されています(画像『かむてんフォトブック』より)
「山形県の母なる川であり、松尾芭蕉の句でもお馴染みの最上川。本合海地区は松尾芭蕉乗船の地や風光明媚な八向楯があることでも知られておる。悩める孫たちよ、ここから最上川を眺めてぼーっとしてみるがよい。きっと自分の悩みなどちっぽけなものに思えてくるはずじゃ」
「都会のようなビル群はないけど、新庄市には日本の原風景のような情景がそこかしこにあるのじゃ。当たり前になってしまっている日常にこそ、大切なものが隠れている。これが世の常じゃ」と、かむてん。新庄市の魅力について再びドヤ顔で締めくくっていました。
インタビューでは8割の冗談と2割の真剣さで新庄について語ってくれた、かむてん。どんな時もユーモアを忘れないサービス精神に、ますますかむてんの虜になった取材班でした
新庄市のために、今できることを
2020年からは新たに、実行委員会形式での活動を開始。交流・関係人口の拡大など複合的な事業展開がスタートしました。
「どうしたらもっと新庄市のことを知ってもらえるのか。もっと遊びに来てもらえるのか。わしが考えるべきことはまだまだ尽きぬ。ブームに便乗した一過性の活動ではなく、天狗の鼻のように太く長〜くPR活動を続けていきたいと思っとるよ」とかむてん。実は来年度に向けて密かに進行している企画がいくつもあるのだそう。かむてんが次に私たちにどんなワクワクを届けてくれるのか、今からとても楽しみです。
地方自治体によるPR活用の新しい運用形式として、2020年からは「活動支援クラウドファンディング」制度を導入しています
2020年4月に設立した、かむてんの公式ファンクラブ「孫の会」。新庄市のふるさと納税のほか、かむてんオンラインショップからも申し込みが可能です
「夢は天狗が地球を征服すること!…え?他にないですかって?じゃあ、世界中の孫たち100万人と出会うこと☆」
コロナ禍では、「人を集める」というご当地キャラクターの存在意義すら揺らいでしまうかのような日々が続いています。ファンとのコミュニケーションを大切にしているかむてんにとって、その失意や歯がゆさは、いかほどだったことでしょうか。
それでも、いま新庄のためにできることは何か―。それを模索しながら、活動し続けるかむてんはいつだって楽しそう。決して押しつけがましさはなく、心にすっと入ってくるような心地のよいポジティブさ。それはきっとかむてんが自分の気持ちに正直で、とことん自然体で生きているからこそ。
全国から誰もが心置きなく新庄を訪れられる、そしてかむてんが新庄の名を広めるために全国を自由に飛び回ることができる。そんなかつてのような日の再来を、かむてんは誰よりも鼻を長~~くして待っているに違いありません。
「山形県内、そして全国の孫たちや。元気かの?また会える日までじぃちゃんも頑張るから、みんなも元気でおるんじゃよ。これからも応援よろしくなのじゃ☆」
プロフィール
山形県新庄市イメージキャラクター かむてん
山形県新庄市の北東にそびえる神室山に住むと伝えられている伝説の天狗。類まれな神通力の持ち主であり、 “鼻をなでると幸せになれる”と言われ、ご利益天狗としても親しまれている。1994年、「昔かたりのきこえるみち」づくり事業イメージキャラクターとして誕生。翌1995年、新庄市イメージキャラクターに就任。『HUNTER×HUNTER(週刊少年ジャンプ/集英社)』などの代表作で知られる新庄市出身の漫画家・冨樫義博さんが生みの親。身長は180cm~200cm(日による)。
勝負メシ
「最上地方で古くから育てられている在来品種・最上早生を使った『新庄蕎麦』や鶏の旨味がぎゅっと凝縮された『とりもつラーメン』はマストじゃ」と推しメンならぬ推し麺を挙げた、かむてん。そしてこうも続けます。「山形県はどの地域も米どころじゃが、新庄市産のお米も負けてはおらぬよ。ふるさと納税お礼品ランキングで全国1位(※)に選ばれるほどの人気ぶりなのじゃ!」
※ふるさと納税ポータルサイト「ふるさとチョイス」平成29年度上半期お礼品申込数