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2021.12.20

技術者を丁寧に育み 山形のまちに輝く灯りを

東北電化工業株式会社 代表取締役社長 會津圭一郎さん

かいぎさん
山形の街並みを見渡す本社屋上にて

山形の街並みを見渡す本社屋上にて

東北電化工業株式会社(以下、東北電化工業)といえば、「東北電化工業~♪」のリズミカルなサウンドロゴが耳に残るテレビCMで、ピンと来る方も多いはず。電気工事業の分野で県内ナンバーワンの施工実績を誇る、業界を牽引する企業です。代表取締役社長の會津圭一郎さんに、いま、力を入れている取り組みや、東北電化工業の今後について想いを伺いました。

“形”に残る建物を自分たちの手で

東北電化工業のはじまりは1945年。終戦直後、安価な電力を使って公衆浴場の湯を沸かすことを考え、東北電化工業所(東北電化工業の前身)が発足しました。わずか数名の社員でスタートした同社は、電気工事業として着実に歩みを進め、山形県内のみならず、宮城・福島・東京にも拠点を展開。現在は総合電気設備業として、従業員数381名、グループ企業11社、業界では売上高山形県内トップの企業に成長しています。

東北電化工業で施工したやまぎん県民ホール(山形県総合文化芸術館)。同社では県内の主要な建物の電気設備工事等を手掛けています(写真提供:東北電化工業)

東北電化工業で施工したやまぎん県民ホール(山形県総合文化芸術館)。同社では県内の主要な建物の電気設備工事等を手掛けています(写真提供:東北電化工業)

アスリートたちの活躍が記憶に新しい「東京2020オリンピック・パラリンピック」。その舞台となった国立競技場の工事にも関わった同社。「最先端の工事現場を経験させたいし、技術力も高めていきたい」との思いから、若手を対象に立候補制にしたそうです。募集はすぐに定員いっぱいに。「話題になった建物を自分たちの手で工事したい、貪欲に技術力を高めたいという若手が多かった。若い社員の前向きな姿勢があるからこそ、ここまで会社が成長して来られたのだと思います」

電気は私たちの生活に必要不可欠なもの。その電気を電力会社の送電線網から建物に引き込み、コンセントや照明などの電気に関わる設備を施すのが電気設備工事です。東北電化工業では、オフィスビル、学校、工場、病院、一般住宅などの建築物のほか、道路照明、トンネル照明など身の回りのあらゆる電気設備工事を行っています。

「若手社員はベテラン社員の熟練の技を身につけようと、技術力の研さんに意欲的です」と會津さん。その頑張りに応えるべく、社内技術技能競技会の開催や研修制度の充実を図るなど、人づくり、技術力の向上に力を注いでいます。

「当社の財産である “人”への投資は惜しみません。ですから、数年かけて技術者を育てるために、資格取得支援も含めて人事制度を整えています」。毎年、20名前後の新入社員を採用し、「技術者の育成にも尽力している」といいます。

電気工事について基礎作業の正確性や安全性、スピード、品質の高さを競い合う社内技術技能競技会。社員一人ひとりが自身の技術に磨きをかけています(写真提供:東北電化工業)

電気工事について基礎作業の正確性や安全性、スピード、品質の高さを競い合う社内技術技能競技会。社員一人ひとりが自身の技術に磨きをかけています(写真提供:東北電化工業)

女性が少ない業界ながらも、その能力に期待

“仕事上では男女の差はない”というのが同社のスタンス。女性技術者の育成や女性の管理職登用、結婚・出産後も働き続けられる制度の充実など、女性の能力を活かす職場づくりを進めてきました。取り組みが評価され、山形県が推奨する「やまがた子育て・介護いきいき企業」にも認定されています。

「女性技術者のイメージが浸透してきたせいか、毎年、新卒の女性が入社を希望してくれるようになった」と會津さん。女性が少ない業界の中で、取り組みの成果が確実に表れていることを実感しています。
「当社には技術職や管理職で働く女性社員たちがいます。先輩の姿をロールモデルに、後に続く社員たちが高みを目指してくれたら」と會津さんは期待を込めます。

「女性は資格取得率が高く、文系出身者でも入社1年目で、難しいとされる第一種電気工事士の資格を取っている社員もいます」(写真提供:東北電化工業)

「女性は資格取得率が高く、文系出身者でも入社1年目で、難しいとされる第一種電気工事士の資格を取っている社員もいます」(写真提供:東北電化工業)

その場限りではない、つながりのあるサービスを

“電気工事業をなりわいとする会社として、何かできることを”と、県内5か所の児童養護施設に、毎年、クリスマスイルミネーションの寄贈と取り付け工事を行っている東北電化工業。この活動は10年以上にわたり続いています。

大切にしているのは、寄贈という形で終わるのではなく、設置工事、その後の取り外し、保管と、その場限りではないトータルのサービス。
社員さんからは「イルミネーションの点灯の瞬間、子どもたちの大きな歓声とはしゃぐ姿に、とてもうれしくなりました」「作業を通して子どもたちと触れ合い、その笑顔に元気をもらいました」との声が上がり、この活動がやりがいや励みにつながっているようです。

児童養護施設のクリスマスイルミネーション。子どもたちへかわいらしい灯りのプレゼント(写真提供:東北電化工業)

児童養護施設のクリスマスイルミネーション。子どもたちへかわいらしい灯りのプレゼント(写真提供:東北電化工業)

「山形花笠まつり」のイルミネーションアーチに電気を灯す工事や、ちょうちんの取り付けなどを行っています(写真提供:東北電化工業)

「山形花笠まつり」のイルミネーションアーチに電気を灯す工事や、ちょうちんの取り付けなどを行っています(写真提供:東北電化工業)

「モンテディオ山形へLEDリボンビジョン※の寄贈と設置を行いました。万が一の災害時にも電源を確保できるよう発電機も提供。物を提供する以上に、そこからつながる幅広い意味での貢献をしていきたいです」 ※リボンビジョン…選手の登場映像やゴール演出、スポンサー表示などを映像配信する(写真提供:東北電化工業)

「モンテディオ山形へLEDリボンビジョン※の寄贈と設置を行いました。万が一の災害時にも電源を確保できるよう発電機も提供。物を提供する以上に、そこからつながる幅広い意味での貢献をしていきたいです」 ※リボンビジョン…選手の登場映像やゴール演出、スポンサー表示などを映像配信する(写真提供:東北電化工業)

未来を担う世代へ伝えていきたい

電気工事業界でトップを走り続ける東北電化工業。2022年5月には創立75周年を迎えます。グループ企業は11社に。「グループとして社員全員の気持ちを一つにし、一体感を持った経営をさらに一歩推し進めていきたい」と現在、グループアイデンティティの策定を進めています。

企業として大きな発展をみせる東北電化工業ですが、一方で懸念もあるといいます。それは若い世代の建設業界離れ。数年前から工業高校を目指す中学生が減り、企業や自治体で技術系の人材を募集しても人が集まらない現状にあるのだそう。

「昔は“3K”と呼ばれたこともありました。確かに屋外での作業も多く、夜間や土曜・日曜に作業を行うこともあり、厳しい面もあります。ですが、先の国立競技場のような最先端の現場や、県内の主だった建物の現場に携わることのできる、そしてそれらが形として残る、やりがいのある仕事です」

「こうした側面を小・中学生に伝えていきたい。社会貢献やテレビCMも、この業界を知り、興味を持っていただくための第一歩。業界全体を元気にしていくことができたら」と會津さんは前向きに語ります。

一般家庭のお困りごとを解決する出張サービス「でんかにおまかせ!」。テレビCM は2011年から放映(写真提供:東北電化工業)

一般家庭のお困りごとを解決する出張サービス「でんかにおまかせ!」。テレビCM は2011年から放映(写真提供:東北電化工業)

建設現場は高年齢化が進んでいることも課題。「入職者を増やすために、電気設備業を理解していただけるような業界PRも進めていきたい」と會津さん

建設現場は高年齢化が進んでいることも課題。「入職者を増やすために、電気設備業を理解していただけるような業界PRも進めていきたい」と會津さん

電気は生活になくてはならないライフライン。そして、ほっと和んだり、空間が華やいだり、暮らしのエッセンスでもある灯りの存在―。
未来の灯りを守るために、“電気”を届ける技術者を大切に育てていく。會津さんの言葉には、そんな想いが込められていると感じました。未来に輝く技術者が、山形のまちのこれからを、明るく照らしてくれることでしょう。

プロフィール
東北電化工業株式会社 代表取締役社長 會津圭一郎さん

1964年、総合電気設備業を営む東北電化工業株式会社の創業家長男として山形市で生まれる。日本大学山形高等学校から日本大学生産工学部に進み、東京の土木コンサルタント会社を経て、1994年に東北電化工業へ。仙台営業所長、常務、専務を経て2006年から代表取締役社長に。県電業協会会長、県電気工事工業組合理事長、日本電設工業協会理事なども務める。

東北電化工業株式会社

山形県山形市青田3-9-18

https://www.tohoku-denka.co.jp/
東北電化工業株式会社

この記事を書いた人
そらいろかいぎさん

そらいろかいぎさん
Profile 山形会議のキュレーター。寒河江市出身。マイペースそうに見えるが、どうやら見えないところで人並に緊張しているポーカーフェイス。某ネズミのキャラに似ているとの声も。
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