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2022.05.20
新スタジアムの“その先”へ
モンテディオは、前へ進みつづける。
株式会社モンテディオ山形 代表取締役社長 相田 健太郎さん
2025年に新スタジアムの運用開始を目指す、山形県全域をホームタウンとするプロサッカークラブ「モンテディオ山形」。かつてJリーグで唯一の“社団法人”が運営するクラブだったモンテディオは、株式会社化を経て、いま大きく羽ばたこうとしています。今回は2019年に社長へ就任し、クラブに変革を起こし続ける相田健太郎さんにお話をお聞きしてきました。
1本の映画が変えた進路
山形県南陽市に生まれ、その後はお父様の仕事で国内外に暮らした経験を持つ相田社長。幼少期からサッカーに親しみ、大学卒業の際にはプレイヤーとしての道もあったと振り返ります。しかし大学時代に見た1本の映画『ザ・エージェント』をきっかけに、選手を支えるスポーツエージェントという仕事に興味を持ち始めました。
「当時はまだ“代理人”という仕事が日本国内で今ほど認知されていない時代でした。そこで、まずは育成年代に関わる方たちとの信頼関係を築こうと、旅行代理店で部活やサークル向けの団体旅行を取り扱う仕事に就いたんです」
その仕事がサッカークラブ・水戸ホーリーホックとの出会いを生み、念願だったサッカーの現場に。しかし大好きなサッカーをビジネスの側面から見たとき、まだまだ伸びしろがあることにも気づかされたと相田さんは語ります。
「日本国内ではやはり、サッカーよりも野球の方がマーケットとして成熟していると感じました。そこでサッカーをスポーツビジネスとしてしっかり大きくしていく方法を学びたいと、東北楽天ゴールデンイーグルスに入社しました。そこで培われたマインドやさまざまな人との出会いが、今の自分自身の仕事に対する姿勢に直結しています」
折しも東北楽天ゴールデンイーグルスは創設から3年を迎えた頃。そこから6年でリーグ優勝・日本一を勝ち取るなど、活気に溢れていました。
「チームだけでなく、パ・リーグがとても活発だった時期に現場を体感できたことは大きかったと思います。自分で仕事をつくり出すというか、さまざまなことにアンテナを張っている方たちがとても多かったので、現状に満足しないという刺激をもらう毎日でした」
その後、同じ運営会社であるヴィッセル神戸に移り再びサッカー界へと戻った相田社長。そして2019年、それまでの実績を評価されモンテディオ山形に社長として迎えられることになります。
「モンテディオ山形の社長に、という時に旅行代理店時代の先輩へ挨拶に行ったんです。『一貫して持ってきた志でそこまで辿り着いて、それはすごいよ』と言っていただけて、あの嬉しさは今でも覚えています」
2021年にリニューアルされたクラブエンブレム。山形を象徴するモチーフに結束の思いが込められています。デザインは山形市出身のデザイナー奥山清行氏によるもの
モンテディオ山形の未来
社長に就任するよりも以前、NDソフトスタジアム山形で行われたモンテディオ山形の試合を観戦した際に、多くの課題を感じたと相田社長は言います。
「まずはスタジアムに辿り着くところから大変だと思いました。モンテディオの過去を否定するつもりは全くありませんし、私は日本一地域の方々に愛されているクラブだと思っています。なのにスタジアムにはなんだかあまり活気が感じられなくて。選手も運営も、より高いモチベーションを持つためには何が必要かと考えさせられました。
ですからこのクラブに来てからは、とにかくお客様に楽しんでもらうことを大切にしようと。一方で株式会社という組織でもあるので、しっかり収益を出せる強い組織にしようと思って取り組んできました」
そう語る相田社長が大切にしていることの一つには、スピードがあります。
「お客様からの要望があったとき、その対応は早い方が喜んでいただけます。サービスとしてそれはとても大切ですし、良いものはどこよりも早く実施したいという思いもあります。就任初年度にはチケットのフレックスプライス制を導入しました。より価値の高い試合チケットにはより多くの対価をいただき、その分しっかりエンターテインメントとしての価値を提供しています」
キックオフを前に賑わう“ブルーキッチン”
質の高いグルメを提供する屋台をより魅力的に演出した“ブルーキッチン”や、家族連れに嬉しい“こども縁日”、花火で彩る夏祭り企画など、来場者が楽しめる取組みをモンテディオは次々に導入しています。
2022年のスローガン「ブッチギレ YAMAGATA ICHIGAN」
2021シーズンはクラブ最長となる連続無敗記録、さらに決算では過去最高の営業収益を記録し、念願だった新スタジアムの建設計画も予定地が決まるなど、ピッチ内外での活躍が顕著な近年。それは同時に、J1昇格という期待を背負うことでもあります。そんな大切な2022シーズン、モンテディオ山形は「ブッチギレ YAMAGATA ICHIGAN」というスローガンを掲げました。
地域貢献活動として「大蕨棚田再生事業(山辺町)」に臨んだ藤嶋選手と木村選手。「地域の皆さんと共に」という思いを語ります
「これはスタッフも選手も、圧倒的な当事者意識を持ってほしいという思いから来ています。昨年はクラブとして初めてシーズン途中での監督解任がありました。結果的に監督に責任を負わせるかたちになってしまいましたが、私をはじめとするスタッフにも、選手たちにも責任があったと思っています。ですから今季はなおさら、私たち全員が前向きに取り組むこと、このクラブがより良い姿に変わるために何が必要か、当事者としてしっかりやっていくことが重要だと思いました。そこはスタッフか選手かという区別なく伝えていますし、クラブ一丸で取り組んでいく決意を込めたスローガンです」
新スタジアム構想から見る山形の未来
モンテディオ山形に関わる全ての人の悲願だった新スタジアムの計画も、山形県から建設予定地の承認を受け本格的に始動。報道では涙を浮かべる相田社長の姿も見られました。
「まずはここまで来られて、ほっとする気持ちでした。新スタジアム建設はモンテディオ山形が欲していることなのに、新スタジアム推進事業株式会社ということで外部の大先輩がたに頼りきっている状態でした。それがとてもありがたいと同時に申し訳なく思っていたので、やっとスタートラインに立てたという思いがありました」
さらに新スタジアムの構想について、相田社長は次のように語ります。
「新スタジアムは“まちづくり”の一環としてつくっていきたいと思っています。モンテディオの試合は年間で20回程度です。その他の日にどんな活用ができるのか、サッカーに限らず県内のフィールドアスリートのためになるもの、そして県民の皆さんに誇りに思ってもらえるスタジアムとして準備を進めています」
ファン・サポーターと勝利の喜びを共有する選手たち
“サッカー選手を支える仕事に”という志は今、多くの出会いと経験を通して、クラブと街を活気づける原動力に生まれ変わろうとしています。そして「山形一丸」の言葉が示す通り、シティ・プライドの中核を担おうとしているモンテディオ山形。県民みんなの声援は、きっとその前進を助けるものになるはずです。
プロフィール
株式会社モンテディオ山形 代表取締役社長 相田 健太郎さん
山形県南陽市出身。株式会社フットボールクラブ水戸ホーリーホック、株式会社楽天野球団、楽天ヴィッセル神戸株式会社とスポーツビジネスの最前線で知見を深め、2019年に社長就任。
山形県天童市山王1-1
https://www.montedioyamagata.jp/