Montedio
2022.09.08
Vol.02 より多くの人に、より多くの感動を 地域に目を向ける運営部
公園内に設置されたイニシャルモニュメントの前で。荒井薫さん(左)と原田祥平さん(右)
コロナ禍による入場者数の制限や観戦ルールの制限など、Jリーグ全体でサッカーの新しい楽しみ方を模索する近年。モンテディオ山形ではホームゲームごとにさまざまなイベントを行い、3年前の賑わいを取り戻すべく試行錯誤を繰り返してきました。文字通り試合当日のスタジアム運営を担う“運営部”のお二人は確かな手ごたえを感じながら、それでもまだモンテディオ山形の魅力を届けきれていない人たちがいると言います。
ホームゲームを盛り上げるために
「今季のホームゲームにおける平均入場者数は、第34節ホーム岩手戦の時点で5,917人になりました。これはJ2リーグ22クラブの中で第4位の数字です。しかし、山形県の人口は約104万人。モンテディオの名前は知っているけど…という方がまだまだ多いと感じています。そんな方に私たちのことを知っていただいて、スタジアムに来て楽しんでいただけるようにすることが使命だと思っています」
そう語る荒井さんと原田さんの運営部では、来場者に非日常の楽しさを提供するべく、スタジアムグルメ「ブルーキッチン」の充実、試合への期待を盛り上げる会場装飾、ホームゲームごとに異なるコンセプトのイベント実施など、さまざまな取り組みを実現させてきました。
特に2022シーズンからはホームゲームにおけるチケット・グッズ・ファンクラブ・飲食売店を完全キャッシュレス(非現金決済)化。クレジットカード・電子マネー・QRコード決済など主要27種類の決済が可能で、キャッシュレス決済手段を持たない来場者には発券機でプリペイドカードを発行できるようになっています。
これは荒井さんがアウェイゲームの帯同で長崎を訪れた際に目にしたもので、V・ファーレン長崎の担当者からもデータを共有してもらいながら進めたものなのだとか。東北地方におけるプロスポーツのイベントで完全キャッシュレスを導入しているのは東北楽天イーグルスとモンテディオ山形だけという先進的な取り組みで、この動きは他のJ2クラブからも好反応をもらえているそうです。
初めて来場する方にも事前通知。ブルーキッチン出店者にも機器操作のレクチャーが実施されました
「もともとは2008年にスタートした飲食売店の“ブルーキッチン”は現在36店舗に参加いただいて、肉メニューや麺類を始め、ドリンクからスイーツまで豊富に揃います。Jリーグ全体で見ても屈指の規模になっています。新型コロナウイルス感染予防の意味も込めて人と人が接触する機会を減らし、現金授受の手間を最大限に省いて、より便利にしようと今季から導入した完全キャッシュレス化も好調で、今季は第31節のホーム金沢戦時点で既に昨年の全ホームゲームにおけるトータルの飲食売上を超えています。来場された方の利便性とブルーキッチン出店者のどちらにも貢献できているのではないでしょうか。他クラブの方もよく視察に来られているので、このスタジアム完全キャッシュレス化はますます主流になっていくと思います」
さらにホームゲームではサッカーに興味がある人はもちろん、そうでない人もワクワクできる空間の創出に力を入れている運営部ですが、その装飾についてまだ課題は多いと原田さんは言います。
「モンテディオ山形が指定管理者を務める山形県総合運動公園は県の施設ということで、会場としての装飾は試合当日だけというルールがあるんです。年間を通して考えるとホームゲームを開催していない日の方が多いわけですから、そこでどうやって存在感というか、ここでイベントを開催しているということを伝えられるかが課題です」
そして、全ての人に開かれた県の施設だからこそ、どう生かすかでより多くの人に還元できる可能性が広がると続けます。
「駐車場も含めて広大な土地がありますし、この場所でモンテディオ山形のさまざまな側面を見せられれば、そんな方々に来場していただくきっかけにもできると思います。サッカーを軸とする総合的なエンターテインメントを提供して地域貢献したいと思っているので、この場所の強みをしっかり出していきたいですね」
運動公園内の広大な敷地を生かして夏期ホームゲーム5試合で実施したウォーターパーク。まさに非日常空間で、子どもたちの目も輝く
サッカーを通した地域貢献
運営部はスタジアム運営のほかにも、県内35市町村でのホームタウン活動を担う部署。今年6月、およそ3年ぶりに対面で実施された「日新製薬PRESENTS モンテディオ山形『夢クラス』」をお二人は振り返ります。
「今年で18年目になる活動で、県内各地域の小中学校に選手と訪問してきました。選手から参加生徒へ自身の歩みをレクチャーしたり、質疑応答コーナーを設けたりもしました。サッカーボールを使ったゲームで触れ合うシーンもあるなど、学校と弊クラブの相互にとって貴重な時間になったと感じます」
「サッカー選手はアスリートであると同時に“夢を叶えた人”でもあるということで、その経験を子どもたちに伝えつつ、自分の将来について考える機会をもってもらおうという活動です。昨年と一昨年はオンラインで開催しましたが、やはり実際に会って交流することは大切だと思いました。子どもたちの笑顔と触れ合うことで選手も私たちも元気をもらえます」
地域との交流は選手自身にとっても貴重な体験になると語る荒井さん。地域貢献活動であるからこそ、必ずしもサッカーに興味がない人でも楽しめる場を提供することの大切さを強調します。
「将来の夢がなんだったとしても、その夢を叶えるためのプロセスは同じだと思うんです。好きなことを極めたり、楽しいと思えることに打ち込んだりすることの大切さを、ひとつの成功体験として伝えられたらと思っています」
今季は6/9(木)と6/28(火)の2日間で山形市立みはらしの丘小学校や天童市立長岡小学校などの計8校を訪問。たくさんの笑顔に迎えられました
また、モンテディオ山形は今季からJリーグとサントリーウエルネス株式会社が10クラブと連携して実施している「Be supporters!(サポーターになろう!)」プロジェクトにも参加しています。これは地域の高齢者施設に入通所している方々に、クラブを支えるサポーターになることで活力をもってもらおうというもの。応援メッセージは敬老の日に最も近い9/14のホームゲームで横断幕となって掲出されます。
老若男女を問わず、サッカーを通してポジティブなメッセージを発信するモンテディオ山形。荒井さん・原田さんのお二人は、今後の課題はPR力だと声を揃えます。
「ホームゲームの魅力を増やしていくことも大切で、地域の中でモンテディオ山形という存在をもっと伝えていくことも大切です。今以上に声を届けていくことが大切な局面にきていると感じます」
一人でも多くの人にクラブの魅力を届け興味を持ってもらうため、理想に向かって邁進し続けるモンテディオ山形。常に一歩先へ行こうとするその目線は、しっかりと地域社会にも向けられています。次々に打ち出す取り組みの数々は、ここ山形で暮らす全員が共有できる明るい未来への一歩になるはずです。
プロフィール
株式会社モンテディオ山形