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モンテディオ山形のREAL

Montedio

2023.02.24

Vol.05 足もとからチームを支える指定管理部

体育館内に設置されているピアノは旧山形県民会館の大ホールで使用されてきたもの。ヤマハのフルコンサートグランドピアノで、鍵盤は象牙製。

体育館内に設置されているピアノは旧山形県民会館の大ホールで使用されてきたもの。ヤマハのフルコンサートグランドピアノで、鍵盤は象牙製。

新スタジアムの建設などで昨今なにかと話題に上る「山形県総合運動公園」。NDソフトスタジアム山形を含む約 56 ヘクタール(東京ドームおよそ 12 個分)にもおよぶ広大な施設を、モンテディオ山形は「指定管理者」として管理・運営しています。スタジアムを訪れ、試合を観戦するだけでは見えにくい、「縁の下の力持ち」の役割。サッカークラブとしての事業と施設の公共性というバランスをとりながら進める指定管理部のお仕事を、ピッチの整備にも力を注ぐ指定管理部長の長岡隆泰さんにお話をお聞きしました。

モンテディオ山形の“再投資”とは

モンテディオ山形のホームゲームをはじめ、プロバスケチームのパスラボ山形ワイヴァンズ、実業団バレーチームのアランマーレ、さらには学生の大会などでも使われる山形県総合運動公園は 1992 年開催のべにばな国体を契機に整備された、まさにスポーツの集約地。もともとはモンテディオと全く別の組織である山形県総合運動都市公園公社という第 3 セクターによって運営されており、指定管理部の長岡さんはそちらに所属していた経歴を持っています。

「当時、山形県総合運動都市公園公社に所属していた私とモンテディオ山形は、『貸す側』『借りる側』と対局にあるような立場でした。今は株式会社モンテディオ山形が山形県から委託を受けて管理していますが、たとえば施設の維持管理という面だけを見れば、中に入らせない、何も触らせない公園であれば管理も楽になります。ですが、山形県総合運動公園は公共の場所でありながら、プロスポーツチームの活動拠点であり、県外からの来場者も多い場所。制約・制限のある中でも実際に触って、参加して最大限に活用していただき、楽しめる場所にしたいという思いで取り組んでいます。我々はここを皆さんに“わたしたちの公園”と思ってもらいたいんです。」

公園内に常設されたモニュメントの周りは憩いの場にも

公園内に常設されたモニュメントの周りは憩いの場にも

イベント1
イベント2

すべての人が参加できるよう、さまざまな年代に向けたイベントを実施しています

お隣の宮城県では勾当台公園、東京都なら日比谷公園と、その地域を代表する公園というものが存在しています。山形県総合運動公園をそんな地域に愛される憩いの場所にしていきたいと思いを語る長岡さん。サッカーというコンテンツを提供する立場として、クラブが掲げる“テーマパーク化”を実現させるために現在までさまざまな企画を実施してきたと言います。

「まずは公園内に設置した『MY』のモニュメントですね。広告の類は掲出できない制約の中でも、シンボルを創ることができました。ホームゲームの際の売店やイベントなども、私たちが関係各所と折衝して拡大させてきています。おかげさまで来場者も増え、そこで創出した利益を施設に“再投資”するという好循環が生まれてきています。」

サッカーの魅力を引き出すピッチに

近年では施設内照明のLED 化や老朽木の伐採、駐車場の区画線の引き直し、銀杏並木のライトアップなど、クラブ全体で創出した利益を公園活性化のために還元できるように。その中でもスタジアム内の芝生は、特に投資をしてきた部分だと長岡さんは続けます。

「2~3月のシーズン開幕時のピッチコンディションはこれまでずっと課題でした。地面が重い雪で固まってしまったり、雪解け水であふれてしまったりと、芝生の管理には雪国ならではの難しさが付きまといます。もともと基準以上の工数をかけて維持に努めてきましたが、これも数年前に投資をして、現在ではシステムを導入し、よりきめ細やかで正確な管理を実現しています。」

観客席の除雪1
観客席の除雪2

例年シーズン開幕前には有志サポーターが日頃培った“雪かきスキル”で観客席を除雪します。

AI を用いたそのシステムとは、温度・湿度に加えて近隣の植物の状態なども入力すると、肥料や薬剤などを散布する適切なタイミングを教えてくれるというもの。これまでは人の勘に頼りがちだった部分にデータを用いることで、ホーム開幕戦には青々とした芝生を確実に揃えることができるようになったのだとか。
さらに、隣接する練習場と、本番のスタジアム内、どちらも同じ感覚でプレーしてもらうため、長岡さんは芝生の長さはもちろん、地面の固さなども調整していると続けます。

シーズンオフ中のピッチにて

シーズンオフ中のピッチにて

「練習場が同じ敷地内にあるということは大きなアドバンテージだと思っています。連戦が続くときなどは足への負担を減らすために少し柔らかくしたり、目指すプレースタイルに適したピッチに調整できたりと、あくまで公共施設としての枠内ではありますが、チームの勝利に貢献できている手応えも感じています。モンテディオ山形の中心には、やはりサッカーがあります。そして指定管理部として私ができることは、監督・選手たちが戦う場を整えるということだと思っています。芝生の状態が良ければパフォーマンスが上がって、それが勝利につながれば最高ですよね。」

モンテディオ山形が目指す山形県総合運動公園の姿は、皆が“わたしたちの公園”と思える場所。誰にとっても開かれた公園を一人ひとりが訪れ、そこで素敵な体験をすること。そんな一つひとつの積み重ねが、未来につながっていくのかもしれません。



プロフィール
株式会社モンテディオ山形

山形県天童市山王1-1
https://www.montedioyamagata.jp/
モンテディオ山形

この記事を書いた人
おはなかいぎさん

おはなかいぎさん
Profile かいぎさんの中でいちばん自然を愛するキュレーター。土いじりのほかに、筋トレや映画にも精通している。最近の悩みは「自宅の周りを縄張りとする野良猫たちとの距離感」。
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