やまがたをソウゾウするwebメディア

life

2021.10.22

東北のへその位置からSDGs~山形県、がんばってるよ~

やましんSDGsフェスタ2021

かいぎさん
やましんSDGsフェスタ2021

2021年9月23日、「やまがたSDGsフェスタ2021」が山形市の山形国際交流プラザ 山形ビッグウイングで開かれました。山形新聞・山形放送8大事業のひとつとして、企業や学校、自治体などが取り組むさまざまなSDGsの活動を体感するイベント。山形新聞でSDGsをテーマに連載を経て、県内在住者に限り参加の事前予約が行われました。今回はそのイベントについて紹介します。

そもそも、SDGsってなんじゃらほい?

これがSDGsのアイコン。読み方は「エス・ディー・ジー・エス」ではなくて「エス・ディー・ジー・ズ」

これがSDGsのアイコン。読み方は「エス・ディー・ジー・エス」ではなくて「エス・ディー・ジー・ズ」

最近よく耳にするSDGs。「うん。そうね。やっぱり時代はSDGsだからね。当たり前だよね。SDGs……」と、ちょっと知ったかぶりしたくなるほど。イベントレポートの前にちょっとSDGsのおさらい講座を。

SDGsとは、Sustainable Development Goals(サステナブル・ディベロップメント・ゴールズ)の頭文字とGoalsのsを取ったもの。日本語では『持続可能な開発目標』と翻訳されています。
『開発』とは、ざっくりと“世の中が発展していくこと”。ビルの建設、リニアモーターカーの開通、インターネットにより生活の利便性が増したり、AI(人工知能)によりコンピューターが人間の代わりに仕事をしたりすることも『開発』です。「世の中が発展していく『目標』を、『持続可能な』ものにしていこう」というのがSDGsです。
はて?『持続可能な』『目標』とは?―それは「世の中が発展するために、今はよくても将来的には続かないやり方はやめよう」ということ。例えば、最近海洋ゴミ削減のためにレジ袋の有料化や、環境に配慮した製品に代わったりしています。エコバッグやマイボトルを持ち歩いて使っている人も増えましたよね。便利の弊害を、社会でも『開発』しながら対策するようになってきました。
ほかにも「貧困を無くそう」「ジェンダー平等」などの私たちの暮らしに関わる目標から、「人や国の不平等を無くそう」「産業と技術革新の基盤づくり」など経済的な目標まで17種類あります。

これらの目標を、「先進国と発展途上国、政府と企業、個人と団体など全ての関係者が協働して達成しましょう」というのがSDGsの特徴です。今回のイベントは、山形新聞さんが「みんなにわかりやすくすっぺよ~。来て体験してみてけろ~」とイベントを開催!百聞は一見(験)に如かず。私も行ってきましたよ~。

山形国際交流プラザ 山形ビッグウイングの入り口。ちなみに奥にある「骨市」の看板は、よく見ると「骨董市」と書かれていて、おとなりの会場での開催されているイベントでした

山形国際交流プラザ 山形ビッグウイングの入り口。ちなみに奥にある「骨市」の看板は、よく見ると「骨董市」と書かれていて、おとなりの会場での開催されているイベントでした

尾木ママとよしもと芸人も。SDGsを考える

会場はトークセッションのほか、“尾木ママ”こと教育評論家の尾木直樹さんによる子どもと大人のパートナーシップについての講演や、よしもとのお笑い芸人・次長課長の河本準一さん&山形県住みます芸人・ソラシドの本坊元児さんによるお笑いを交えたSDGsのお話やクイズも。出展ブースでは、花王さんは環境に配慮したパッケージのボディソープの紹介、『まいにちのこめ油』で有名な三和油脂さんは米ぬかワックスのキャンドルづくりのワークショップ、山形大学のカーボンニュートラル研究や農作物の紹介ブースなどがあり、なんだか文化祭みたいなワクワクする雰囲気!!!今年、大学祭が中止になった私としては、このようなイベントを体験できて、ちょっと気持ちを取り戻した感じがしました。

会場のメインシンボル「SDGs Tree」は、ボードに自分がSDGsを意識して行っている「マイ・アクション」を書いて貼るというもの。自分の行動を改めて思い返したり、ほかの人の「マイ・アクション」を見ることで、私でもできそうなことを再発見したりするきっかけになりました。

「こまめに電気を消す」「海の清掃活動に参加する」など参加者それぞれのマイ・アクションが。みんなの思いが大きな木となって育ちますように。私は「食べものは残しません」と書きました。ぺたり

「こまめに電気を消す」「海の清掃活動に参加する」など参加者それぞれのマイ・アクションが。みんなの思いが大きな木となって育ちますように。私は「食べものは残しません」と書きました。ぺたり

紙だけじゃないサステナブルな印刷業〜藤庄印刷ブースに行ってみた!〜

この「山形学生会議」やお姉さんメディア「山形会議」の運営会社である藤庄印刷も出展していました。「i(アイ)が真ん中にある」というコーポレートメッセージが書かれたパネルでは、SDGsの目標の1つである「働き方の取り組み」について、蔵王の森工場をモチーフにした森が背景のパネルには「環境・製品・パートナーシップの取り組み」を説明しています。
印刷は7世紀から8世紀頃に木版印刷が始まった時から約1300年の間、人類の『開発』に役立ってきた歴史があります。15世紀のルネサンス3大発明、グーテンベルグの「活版印刷」もテストに出ましたね。近年ではデジタル化が進み、今までの用途での印刷は減少傾向にありつつも、一方でプラスチック製品が紙製品に置き換わるといった変化が起きています。藤庄印刷のブースでは持続可能な社会に向けて、紙や印刷物の可能性がまだまだあると、パネルで紹介していました。

藤庄印刷のブースでは、「SDGsをおしゃべりしよう」をテーマに、蔵王の森のくまさんとSDGs(ず)きんちゃんというキャラクターが自社の取り組みをパネルで紹介していました。かいぎさんのマスコットもブースにいました

藤庄印刷のブースでは、「SDGsをおしゃべりしよう」をテーマに、蔵王の森のくまさんとSDGs(ず)きんちゃんというキャラクターが自社の取り組みをパネルで紹介していました。かいぎさんのマスコットもブースにいました

[左上]普段はリサイクル業者さんに回している印刷で残った紙「残紙(ざんし)」を使ってメモ帳づくりのワークショップ。いろいろな色や材質の残紙を選び、自分の好きなように組み合わせます。子どもたちに混ざって、オリジナルの「かいぎさんシール」を貼ってつくりました[右上]ペーパーストローのプレゼント。「プラスチックを紙で代用していく」という企業さんに製品として提案します。「紙化ソリューション」「紙の可能性」を探る一環です[左下]山形学生会議初のノベルティとなるエコバッグ。イラストは私が描いたものです。プリント実演コーナーでは、100個のエコバッグを用意しましたがお昼過ぎには無くなりました[右下]パンチ穴の紙など印刷工程で出た紙のくずは「やれ紙」と言うそうです。メモ帳のデコレーションパーツとして置いてありました

山形県とSDGs

山形県ではSDGsを県民運動として強力に推進しようと、2021年7月「SDGs推進本部」を設置。吉村知事を本部長に、理念や行動を県全域に浸透させたい考えだそうです。
2020年8月には、山形県と山形大学と山形新聞社がSDGsを推進していこうと共同宣言を行いました。オール山形でSDGsの取り組みができるつながりをつくって、県民運動への発展を目指しています。この宣言では、①「互いに協力・連携し、活動を加速する」/②「それぞれの事業をSDGsの実現に結びつく取り組みとして磨き上げ多くの県民の主体的な参画を求める」/③「県内外に積極的に発信し、SDGsの理解・普及と実践の深化に勤める」の3つが盛り込まれています。県内では、内閣府が選定する「SDGs未来都市」に飯豊町、鶴岡市、米沢市が選ばれていますが、今後ほかの自治体にも浸透していくことでしょう。

SDGsフェスタのセレモニーに参加された吉村美栄子山形県知事も、会場内の各ブースを視察するお姿が。以前描いていた知事の似顔絵を見てもらうと、「似てるねぇ~!」とお褒めいただきました。うれしい!

SDGsフェスタのセレモニーに参加された吉村美栄子山形県知事も、会場内の各ブースを視察するお姿が。以前描いていた知事の似顔絵を見てもらうと、「似てるねぇ~!」とお褒めいただきました。うれしい!

【学生会議】SDGsはエコ活動じゃない

SDGsはエコロジーと一緒くたにされがち。先程ご紹介した「SDGs Tree」にも、マイバッグやマイボトルを持ち歩くといった、環境や資源を大切にするマイ・アクションを目にしました。もちろん、地球温暖化という観点からこれらはSDGsでもいちばんの課題です。
ですが、SDGs=エコロジーという限定された認識になってしまうと、SDGsの1つとして目を向けられるはずの働きがいや雇用、住み続けられるまちづくりなどの身近な問題が見過ごされてしまいます。モッタイナイ。

私が通っている東北芸術工科大学には、工学による『開発』によって、環境汚染や貧困問題を藝術の力を使って変え、文化の衰退を防いで未来に残していかないといけないという理念があるんです。
創設者の故・徳山詳直先生が「それができるのは三つの山に囲まれて、自然がまだ残っている東北のへその位置、山形だからこそできる」と言って建てられた大学なのです。今から30年も前にSDGsと同じことを既に考えていたわけですね。凄い。

山形県の歴史においても、1889年(明治22年)、山形県鶴岡町(現・鶴岡市)の大督寺というお寺の中に建てられた小学校で子どもに無償で昼食を用意したことが、日本における“学校給食の起源”とされています。また、1938年(昭和13年)国民健康保健法が施行され、8月1日、最上郡戸沢村大字角川村は法律に基づく「角川村国民健康保険組合」として全国第1号の設立認可を受けた“国保発祥の地”でもあります(と吉村知事もおっしゃっていました)。このように東北のへそ―山形県は、とても昔からパートナーシップで助け合う文化が根強くあった場所。自然豊かなこの場所で、持続可能な『開発』をする。そしてSDGsはこれから未来を担う、私たち学生が主体となりアイデアや行動で ― 私の場合は藝術で ― 社会貢献するべきだとあらためて考えたイベントでした。

この記事を書いた人
斎藤天音

斎藤天音
Profile 山形学生会議編集長。山形県白鷹町出身。東北芸術工科大学 芸術学部美術科総合美術コースに在籍しながら個人事業「天音印」を開業。ディレクター、アーティスト、クリエーターとして精力的に活動中。
山形会議をシェアしよう!
keyboard_arrow_up keyboard_arrow_up トップへ戻る