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2024.09.24社会人向け講座「夏芸大」~クリエイティブに浸れた2週間
東北芸術工科大学
大学本館の鏡池前。吹き抜ける爽やかな一陣の風が夏芸大のフラッグをはためかせ、その様子はまるで参加者の学びへの高揚感を表しているようでした
2024年の夏、日本の平均気温は去年と並び統計史上最も酷暑だったそうです。そんな中、東北芸術工科大学(本文以下、芸工大)では、社会人向けのクリエイティブ講座「夏芸大」を8月24日から9月6日まで開催。参加者が皆“アツい”時間を過ごしました。今回の山形会議ではそのレポートをお届けします。
2週間だけ芸工大生!アート&デザインを大人も学べる機会
夏芸大のパンフレット。芸工大の教員陣をはじめ、各分野のプロクリエイターによる「平日講義」「休日制作」「講演会」「無料講座」の50講座から、興味のあるものを選択し特設サイトから申込みができました(写真提供:東北芸術工科大学)
山形市で2年に1度行われるアートイベント「山形ビエンナーレ」の関連企画として今年初開催した夏芸大。働き方の多様化が進む昨今、リカレント教育やリスキリングといった言葉が注目を集めています。 芸工大が、地域の社会人の学びを支援するべく開催したのがこの夏芸大。仕事のスキルアップや趣味に役立つ多彩な講座とあって、年代を問わず県内外から多くの方が受講しました。
当日の運営を担当する学生さんたちの姿も。受付では学生さんが、講座により異なる教室の場所をマップで丁寧に教えてくれたので、広い校内でも会場まで迷うことなく到着しました(写真提供:東北芸術工科大学)
夏芸大のポスター兼パンフレットと、受講者に配布されたステッカーとトートバッグ。さすが芸工大さん、ツールもかっこいい!ステッカーは自分のノートパソコンに貼ろうと思います
初心者も、仕事人にもそれぞれ学びの多い講座
望月 孝先生による平日講義「プロ写真家が教える美しくて美味しい、料理写真塾(スマホ版)」はお皿選びから盛り付け、撮影、総評まで学べる講座。 「望月先生に褒めてもらえるのがうれしくて夢中で撮影できた」「分かりやすい説明で腑に落ちた」「食品撮影は光の当て方でイメージが変わると知り、工夫できるよう実践したい」と当社の受講者からの声がありました(写真提供:東北芸術工科大学)
50もある夏芸大の講座の中から、気になるタイトルの一部をご紹介します。
「お隣さんに差をつける、オリジナルの金属表札制作」
「実用!?縄文人骨セミナー」
「切れ味抜群!木彫家の超マニアックな刃物研ぎ講座。」
社会人になるとなかなか日常出会えそうもない芸工大らしいテーマですよね。ほかにも
「日本を汚したのはデザイナー?乱れ続ける日本の景色。」
「仕事や創作に、ゲームエンジンを。最先端映像作り体験。」
「AI時代の創造的ビジネスシンキング(応用編) 未来をデザインする」
知的好奇心をくすぐるテーマはもちろん、仕事に生かせそうなグッとくるタイトルばかりでした。その講座のレベル感は受講しないとわかりませんでしたが、初心者にとっては新鮮な内容でしたし、上級者なら“講師がどうやって人を魅了するか”という視点で見ても面白いかもしれません。日常では知り合えないような世代や職業の方とコミュニケーションが取れる場面もあり、誰が体験しても刺激的な空間だったと思います。
じっくり2日間かけて油絵や生活雑貨などの作品を思い思いにつくる休日制作、最新のデジタルに触れたりアイデアを出し合ったりするワークショップなどテーマにより異なる約170分の平日講義や、地域の有識者による貴重な講演会などが開催された夏芸大の様子(写真提供:東北芸術工科大学)
トミヤマユキコ先生の平日講義「マンガで学ぶ社会問題。作品が教えてくれる、ルッキズム」。当社の受講者からは「ルッキズムとは単に美醜だけでなく差別をも包括するものだと気づかされた」「相手に対して投げかける言葉の基準として、生まれつきのものを褒貶(ほうへん)するのではなく“本人が選択したもの”を褒めようと思う」「講義で推薦された作品と、トミヤマ先生の著書も読みたい」といった声を聞くことができました(写真提供:東北芸術工科大学)
本間拓真先生の平日講義「ウェブってこんなことまでできる!もっと楽しいウェブの世界」。受講者からは「ウェブデザインの基礎知識を学ぶ座学だと思ったら、グループワークで予想以上に盛りあがった」「自分たちに無い発想を、他グループが発表していて感心した」「時間があっという間だった」なんて声も(写真提供:東北芸術工科大学)
急変する時代。自らの世界を豊かにし、生き抜くヒントを
「時代は急変しています。国は痩せ、人は減り、建物は余り、お金の価値も変わっていきます。これまであたりまえに用意されていた豊かさの姿は変わってゆくのです。私たちは自ら学び、自らの発想力で、自らの世界を豊かにし、生き抜かなければなりません。その“新しい豊かさのヒント”を本イベントで見つけてほしい―。」
これは夏芸大のパンフレットに記載された学長・中山ダイスケ先生からのことば。実際に受講して、新たな気づきにたくさん出合えました。例えば人工知能技術。こうして文章を書く行為すら、AIに脅かされていると感じていましたが、今回夏芸大に触れて“未知なるものを遠ざけるより、付き合い方を探るほうが未来はひらかれる”と感じましたし、私たち大人の在り方・やり方を転換していくべきは今だと捉えることができました。 「学生たちはちゃんと時代にアジャストしているんだから、大人たちだって享受するだけでなく、もっと未来をデザインしていってね」というメッセージだと受け取りました。
芸工大が社会人のキャンパスとなった2週間。参加した当社のメンバーはなんとなく若返って戻ってきたような気がします(笑)。やわらかな頭で、アイデアやワクワクを仕事にもっと取り入れたい、若い世代と共に歩み続けられる地域づくりに貢献できる企業になりたい、そう思える夏芸大でした。