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2024.04.01

環境を見つめ続けて77年。
企業が生み出す付加価値で山形を元気に

株式会社荒正 代表取締役社長  須田和雄さん

かいぎさん
山形市南栄町に竣工した戸建て賃貸の前で

山形市南栄町に竣工した戸建て賃貸の前で

太平洋戦争による荒廃がまだ生々しく残る1947年、後の株式会社荒正となる「荒井製材所」は山形市上野で創業しました。創業者・荒井正年しょうねん氏が目指したのは、安定した雇用を通して地域の活力を盛り立てていくことでした。その後「荒正木材株式会社」「株式会社荒正」と社名の変遷を経ても、根底に流れる雇用創出への思いを抱き続ける同社は、現在では「環境」をキーワードにさまざまな事業を展開する企業に。昭和・平成・令和と時代を超えながら地元へ真摯な視線を向け続ける企業には、山形の未来はどのように見えているのか。代表取締役の須田和雄さんに話をお聞きしました。

時代の変遷を知るからこそ見える課題

自然環境・社会環境・生活環境の3つを軸に事業を展開

自然環境・社会環境・生活環境の3つを軸に事業を展開

現在は地元・山形の「環境」をテーマとして、建設、土木、林業、介護、観光事業と16部門もの事業を展開する株式会社荒正。創業のきっかけとなったのは、地元の雇用創出と生活再建という、切迫した想いだったと須田社長は言います。

「創業者は蔵王上野という中山間地の生まれで、世の中は終戦直後で荒廃していました。そこへ大陸からの帰国者が来れば地域の生活が維持できない、という思いがあったそうです。生活が成り立たなければ家庭を築けず、人がいなければ地域は衰退してしまいます。そこで雇用を生み出そうと考えたときに、中山間地の利点を生かせるのが林業であり、木材加工業だったのだそうです。」

戦後復興による需要の波に乗り、同社は創業からすぐに地域になくてはならない企業へと成長を遂げていきます。木材加工を軸とした事業は建設・土木工事の分野へと展開していき、高度経済成長期の弊害として生み出されたごみ問題に対応すべく、産業廃棄物処理業へと事業規模を拡大するまでになりました。

「環境問題を軸に時代を見てみると、弊社が産廃処理場を稼働させ始めたころと現代では全く意識が変わりましたね。道端に粗大ゴミが放置されているようなことはなくなりましたし、一人ひとりの環境に対する意識は、この40年弱で大きく向上したと思います。しかし現代は少子高齢化による人口減少で、当時とは異なる問題が出てきました。天候不順による水害や土砂崩れなどです。こういった天災は、地球温暖化だけが原因ではないと私は考えています。」

森の手入れがもたらす都市部の安全

かつて人の手が入ることで保全されていた里山は、整備が滞ることで荒廃し、やがて貯水機能を超えた雨によって土砂崩れなどを引き起こすようになったと言われています。つまりそういった災害を防ぐためには、人の手によって森の健全な循環を助けていく作業が必要不可欠。そして自然環境に恵まれた山形で、環境に根差して活動してきた荒正では、およそ10年前から祖業に立ち返って林業への取組みを推し進めてきました。

「かつて大量に植えられた杉は今、植林からおよそ70年を経てるべき時期にきています。木材としてその杉をしっかり活用し、また植えて適切な管理をしていく。山形とともに生きてきた私たちには、そういった健全な循環に取り組んでいく使命があると思いました。」

株式会社荒正では10年ほど前から、杉の利活用に加えて花粉の少ない品種への植え替えも実施しています。伐っては植え、植えては伐っての循環を促すことは、高品質な住宅をつくる助けにもなっていると須田社長は言います。

重機の導入で安全かつ効率的な林業を目指します

重機の導入で安全かつ効率的な林業を目指します

同社で実際に栽培している、花粉が少ない杉の苗

同社で実際に栽培している、花粉が少ない杉の苗

間伐と植林
間伐と植林

間伐と植林のバランスで環境を整えます

「生産した木材をより多く活用するためには、やはり住宅の建材として使っていくことが大切だと思います。ローコスト系で盛り上がっていた住宅業界も、コロナ禍やウッドショックを経て変わってきました。近年は安さよりも品質を求める方が増えてきていますし、地産地消の家づくりという意味でも注目されていると感じます。」

同社では室内の温度差を極限まで少なくした「ファースの家」で、サスティナブルかつ健康に暮らせる住宅を建築。省エネを実現しながら家全体をほぼ均一な温度に保つことで、環境にも人にも優しい家づくりに力を入れています。

「ファースの家」最大の特長である空気循環システム。この装置が家全体の冷暖房を司ります

「ファースの家」最大の特長である空気循環システム。この装置が家全体の冷暖房を司ります

「ビジネスの面だけで考えれば外国産の木材を輸入した方がコストは抑えられるでしょう。ですが県産材を積極的に使うことで山形の森は健全になっていき、それによって災害のリスクを減らせるはずです。社会全体で考えれば、そのリスクを減らす方が重要だと思うのです。」

祖業でもある林業に立ち返り、同時に一人ひとりにとって良質な住環境にも積極的に取り組む株式会社荒正。山形ならではのサービスを提供しさまざまな付加価値の相乗効果で地域の「環境」に貢献する同社は、創業から一貫して山形のより良い未来を見つめています。



株式会社荒正

山形市成沢西一丁目10番6号 (本社)

TEL. 023-695-3381

https://www.aramasa.co.jp/
株式会社荒正

この記事を書いた人
おはなかいぎさん

おはなかいぎさん
Profile かいぎさんの中でいちばん自然を愛するキュレーター。土いじりのほかに、筋トレや映画にも精通している。最近の悩みは「自宅の周りを縄張りとする野良猫たちとの距離感」。
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