work
2021.03.12ミオドラグ・ライコビッチHCが見据える、山形ワイヴァンズの未来
パスラボ山形ワイヴァンズ ヘッドコーチ ミオドラグ・ライコビッチさん
株式会社パスラボが指定管理者を務める山辺町民総合体育館にて
山形県内で唯一のプロバスケットボールチームであるパスラボ山形ワイヴァンズ。発足から7年目となる今季、ヘッドコーチ(以下HC)としてチームの指揮を執るのがセルビア出身のミオドラグ・ライコビッチ氏です。異国である日本の、しかも地方都市である山形がライコビッチHCの目にどのように映っているのか、そして見据える未来についてお話を伺ってきました。
若くして指導者の道へ
10代でプレイヤーとしてバスケットボールを始め、高校生の頃には既に指導者を志していたというライコビッチHC。球技全般が盛んなセルビアという国と、家庭環境の影響が大きかったと語ります。
「16歳のころに初めて所属したチームのコーチが、家族ぐるみのお付き合いをしている方だったんです。素晴らしい人で、みんなが憧れる存在でした。それと家族全員がスポーツに情熱のある家庭で、スポーツすることがライフスタイルである、といった風に育ちました。」 「大学でスポーツを学びたいと考えていたこともあって、その後の進路が指導者への道につながっていきました。」
テニスのノバコ・ジョコビッチ選手をはじめ、日本でも活躍したサッカー選手のドラガン・ストイコビッチ氏など、世界を舞台に活躍する人材を数多く輩出していることからも分かるように、セルビアでは選手だけでなくコーチを育成する環境とメソッドが確立されているのだとか。そこで培われた集中力は、ライコビッチHCの私生活にも影響を与えています。
山形で過ごすバスケ漬けの毎日
「山形は雪がすごいですね。セルビアも寒くはなりますが、こんなに積もることはほとんどありませんよ。」 窓から外を見ながらそう話すライコビッチHCですが、気候や天気は特に気にならない性格なのだとか。
「セルビアは寒暖差が大きくて、15℃を超える温かい日があったかと思えば氷点下になる日があったりということが普通に起こります。ですから寒さには慣れていますし、それに世界中のどこに行ったとしても、その場所の環境に自分の方を合わせた方が早いですよね。あとは一日中バスケの事を考えているので、雪が降ろうが雨が降ろうが実は気にならないんですよ。」
練習後、鶴田選手・ナナ―選手とコミュニケーションをとるライコビッチHC
コーチという仕事に終わりはなく、日常生活でも気づけばバスケのことを考えているというライコビッチHC。来日すること自体にも不安は無かったと振り返ります。
「来日する前年までのポーランドリーグでも良い成績を残せましたし、日本でやることにも自信がありました。ちょうど世界に目を向けて次のキャリアを模索していたこともあって、リーグとしてもチームとしても成長しようとしているBリーグは魅力的なオファーでしたね。」
入場時のハイタッチ。仲間同士の団結を確認する瞬間
「先に日本バスケットボール協会でアドバイザーに就任するため来日していたルカ・パヴィチェビッチ氏(現・アルバルク東京HC)からも日本の良さを聞いていたので、決断に迷いはありませんでした。」
生活面で気に入っている点を聞くと、返ってきた答えは“食文化”。特に山形牛の美味しさは印象に残っているのだとか。 「一度ごちそうになった後、自分でも何回か食べにいったくらい気に入りました。あとは魚が好きで、刺身も好きです。しかもそれだけでなく、お米も野菜も高品質ですよね。日本の食文化はレベルが高いと思います。」 そう言って見せてくれたのは、来日した家族と食事をした温泉旅館での写真。天使のように可愛らしい娘さんの隣には、これ以上ないほど目尻を下げたライコビッチHCが写っていました。
ワイヴァンズと山形のこれから
レギュレーションが異なるとは言え、今季の勝利数が既に昨季を大幅に上回っている山形ワイヴァンズ。ここまでの手応えを尋ねると、ライコビッチHCは引き締まった表情で応えます。 「新たに就任するヘッドコーチとして、初めにやったのがチームの状態をこと細かくチェックすることでした。素早くどんなチームなのか理解することはとても大事です。」
そんな前置きから始まったのは、フロント陣を含むチーム全体への感謝の言葉でした。 「私自身がチームに必要なことを見出して、それを改善していくというプロセスはやりやすいですし、私を信頼してそうさせてくれているフロントに感謝しています。いま私たちは、クラブが進むべき方向性を共有できています。ですから私はその目標に向かうための原動力、エンジンのような働きをしたいです。」
「こんなに緻密な指示をするコーチは初めて」と語る選手も
自身の想いを伝える労はいとわない。スピーチにも熱がこもる
自身の”ambition(野望)”とまで強い表現で語った未来には、ワイヴァンズを応援するファンやスタッフの姿が明確にありました。
「就任してからこれまで、徐々に観戦に来てくださる方が増えているように感じます。ひとつは勝利という結果を残せていること。そしてプロモーションがうまくいっていることが理由でしょうか。チーム自体が良くなることはもちろん大切ですが、それと同じくらい大切なのはファンの皆さんが楽しんでくれることです。選手やコーチはもちろん、応援してくださる皆さんも含めたものが“チーム”だと私は考えています。ですから、ファンに楽しんでもらって、選手が成長して結果も残す。選手もコーチも、ファンのためにプレーしているというメッセージをたくさんの人に伝えたいですね。」
終始、真摯な思いを語ってくれたライコビッチHC。この人と一緒に成長していくワイヴァンズが見たい。そんな熱い思いが伝播していくような、エネルギーに満ちたインタビューになりました。
プロフィール
パスラボ山形ワイヴァンズ ヘッドコーチ ミオドラグ・ライコビッチさん
セルビア・ベオグラード出身。2007年、U-19セルビア代表のアシスタントコーチとして世界選手権の優勝に貢献し、2011-15年にはポーランドリーグのチームでHCを務め、チームを優勝に導いた。2017年にはNBAサマーリーグでミルウォーキー・バックスのACを務めた。Bリーグでは富山、西宮、八王子でも指揮を執り、2020-21シーズンからパスラボ山形ワイヴァンズで指揮を執っている。
勝負メシ 山形のすじこ
「人生最後に何を食べるかと聞かれたら、“すじこをあたたかいご飯にのせて食べる”と答えます。山形で売っているすじこは日本一。お取引先のスーパーさんでも一番売れるおにぎりはすじこなんです。皆さんも山形のすじこの美味しさを確かめてみてください」と矢野さん。水産物に限らず野菜や果物、より美味しいものを人々が欲し食する山形に、良い食材は集まってくるのだそうです。
店名