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2020.10.01文翔館近く、リノベーションされた開放的なレンタルスペース
class studio(クラス スタジオ) 支配人 片桐 賢久さん
メインフロアは122㎡、天井高は3.5m。折りたたみ椅子なら100席以上並べられるという広々としたスペース(写真提供:class studio)
ここは、山形県郷土館「文翔館」の目の前にある工藤ビル。築50年を超えるビルの4階をリノベーションしてつくったclass studioは、大きな窓から差し込む自然光が心地よい、オープンキッチンが備わったレンタルスペースです。支配人の片桐賢久さんより、class studioの楽しみ方を伺いました。
“クラス”(教室)と“暮らす”というコンセプト
「このビルは僕が参加した第2回リノベーションスクール・山形の対象物件だったんです。ここでは大家さんが長年塾を営んでいて、たくさんの卒業生を輩出しています。そのリノベーションスクールでは、塾の卒業生や近隣の住人の方が講師や生徒として戻ってこられる場所として、カルチャースクールのようなイメージをプレゼンしました」と話す片桐さん。その後、リノベーションスクールの講師であり東京の撮影スタジオを経営する建築家の方から「やっぱりこんなに窓があって自然光が入る場所なら撮影スタジオにも向いていると思うよ」と、事業化の計画段階でアドバイスしていただき、カルチャースクール・撮影スタジオ・イベントスペースの3つの用途で使ってもらえる場所にしようと考えたそう。
スタジオに備え付けられたキッチンは大きなカウンターテーブル兼調理台、3口のガスコンロ、48Lのガスオーブン・業務用冷蔵・冷凍庫もあるので料理教室にも最適。ほかにもフラワーアレンジメント教室やスクリーンやプロジェクターを使った座学などワークショップの開催での利用も多いといいます。
もともと片桐さんはカメラや動画の撮影の仕事にも携わっていたことから、機材も揃っているという強みもあり、デザイン系や美容系の学生さんの作品撮りにも好評とのことです。
シンプルな内装に調和するキッチン用品
文翔館を借景としたソファのスペース。角度により表情が違うスタジオ
窓からは文翔館とその向こうには月山を望む、贅沢な眺め
コロナ禍で変化するレンタルスペースの在り方
新しい生活様式下において変化していく私たちの生活。class studioの利用法についても移り変わっていると片桐さんは指摘します。
「テレビ局の番組撮影や企業説明用の動画撮影だけでなく、オンライン配信可能な設備も整えたことで企業の設立パーティーを少人数がここに集まり開催し、他の方にはオンラインで参加してもらうというような利用法もありました。class studioで完結するのではなく、ここから発信するような使われ方に変化しています」
管理者としてだけでなく、リノベーションも自ら手掛ける片桐さん
学生時代はジャーナリストになるべくカメラやライターの技術を学ぶも、就職はアパレル業界へ。販売スタッフやバイヤーとして働く中で店舗デザインに目覚め、不動産屋を経てリノベーションスペースのオーナーとなった片桐さん。今までの経験の点と点が線となり、今があると振り返ります。
「不動産会社ではアパートの入退去のリフォームを担当していて、クロスの張替えだけでなく、予算を少し上乗せしてデザイン性のある部屋に改修して差別化することを大家さんに提案していました。その経験からclass studioの図面のようなものを自分で書いて、電気、水道、ガス、大工さんにそれぞれへ直接お願いしてコストダウン。遠回りのような経験やさまざまな人との縁があったからこそ、リノベーションのレンタルスタジオに辿り着いたと思います」。
「建築家ではないからゼロからはつくれないけど、レールや配管の状態などは経験からある程度わかります。元からある良さを引き出すことがリノベーションの楽しさ」だと片桐さん
植物のセレクトは片桐さんの奥様であるフローリストAtelier Momo(アトリエ・モモ)の聡美さんによるもの。class studioのロゴをつくってくれたAtelier Momoのデザイナーさんと一緒に物件を探していたのが出会いのはじまりとのこと
リノベーションのこだわりと、“ブランドの魔法”への懐疑心
空き物件が地方自治体の抱える社会問題になる中、リノベーションの相談を受ける機会も増えている片桐さん。その建物が持つ雰囲気を掴み、その良さを活かすことをテーマの一つとしているそうです。また、アパレル業界の経験から“ブランドの魔法”を信じなくなったという興味深いお話も。モノの価値に無駄がないか、吟味するようになったといいます。class studioにある家具やキッチン用品はブランド名にこだわるのではなく、そのもの自体が良いかを重視して選んでいます。
コーヒーメーカーはアメリカの調理用品を扱うクイジナート(Cuisinart)社製。一度に12杯のコーヒーを淹れられるという機能性からセレクト。ブランドにはこだわらない片桐さんですが、class studioにある全てのアイテムがかっこよく見えてきます
リノベーションや調度品だけでなく、“そのものの個性を引き出す”という自身の考えが全てにおいて一貫している片桐さん。だからこそ自分がいなくても成立する“レンタルスペース”という考えに至ったといいます。
「class studio自体が街のシンボル的に目立つのではなく、ここから誰かが何かをすることで“結果的に”創造性や文化が高まっていったり、街が盛り上がるきっかけになれば、という考え方です。だからこの場所は、たくさんの方にとことん自由に使ってもらいたいんです」
“何者かになることを求められる世の中”ではあるけれど“こうでなくちゃいけない”ということに縛られたら良い方向には行かないと感じているそう。芯の部分はブレないようにしながら好きなことを突き詰める、とあくまでも自然体な姿が印象的です。
これからのclass studioのこと
密を避ける少人数での女子会など、個人的な利用も増えているといいます。class studioは七日町の街なみに、そして私たちの生活に、どんどん溶け込んでいっているようです。
今後、オンライン結婚式が予定されているというスタジオ。ここには家族だけが集まり、遠方の親戚や友人たちはzoomでつなぐ計画です。このオンライン結婚式では撮影の他に配信のオペレーションのスタッフとしても参加するそう。最近の活動として片桐さんは蔵王で行われた結婚式でのドローン撮影や、山形ビエンナーレの撮影もこなしており、腕も確かなので、配信の技術がないという人も安心です。
みなさんはclass studioでどのように過ごしたいですか。この自由な空間でどういうことをしたいのか、まずは相談してみるのもおすすめ。ワクワクすること、きっと支配人が提案してくれますよ。