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2022.10.14

すべての子どもたちが互いを認め合い、ともに遊べる―インクルーシブな遊びの拠点に

シェルターインクルーシブプレイス コパル

雲のようにたなびく屋根は、周りの風景や背後に広がる蔵王連峰にもよく溶け込む、やわらかなデザイン。建築家ユニット・o+hが設計したコパルは、インクルーシブな取り組みもさることながら、デザイン性も全国から注目を集めています

雲のようにたなびく屋根は、周りの風景や背後に広がる蔵王連峰にもよく溶け込む、やわらかなデザイン。建築家ユニット・o+hが設計したコパルは、インクルーシブな取り組みもさることながら、デザイン性も全国から注目を集めています

2022年の春に開館した、山形市南部児童遊戯施設・シェルターインクルーシブプレイス「コパル」。もう遊びに行ったよ!という山形市のファミリーも多いのではないでしょうか。話題のスポットに、山形会議もおじゃましてお話を伺いました。

すべての子どもたちがともに遊べる、みんな一緒―インクルーシブな遊び場

体育館は木造ドームの広々とした空間。スロープの向こうは大型遊戯場につながっている構造に

体育館は木造ドームの広々とした空間。スロープの向こうは大型遊戯場につながっている構造に

「インクルーシブとは、性別や年齢、人種・国籍の違い、障がいの有無など、異なる背景や特性を持つ人々が互いを認め合い、ともに生きることを指します。コパルは、主な空間をランドスケープと連続するワンルームにすることで、周囲の田んぼや山々と繋がり、すべての場所が公園のような環境をつくっています。スロープや手すりはバリアの解消だけに付けられているのではなく、新しい遊びや学びのきっかけになるような工夫も。すべての子どもが楽しく遊べるアイデアが施設内にちりばめられています」。そう教えてくれたのは広報や企画を担当する青木操さんです。

「コ」は子ども、個々。「パル」は友だち(英語でpal)、公園(イタリア語でparco)の意味。「公園のように人が集い、友だちと遊び学ぶ場所。心を豊かに、個々の可能性を育み、ここから多様性を発信するという思いが込められています」と話す青木さん

「コ」は子ども、個々。「パル」は友だち(英語でpal)、公園(イタリア語でparco)の意味。「公園のように人が集い、友だちと遊び学ぶ場所。心を豊かに、個々の可能性を育み、ここから多様性を発信するという思いが込められています」と話す青木さん

施設内_1
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(左上)そろばんのように珠が動かせる手すりは、障がいがない子も誰でも工夫して遊べます(写真提供:コパル)。(左下・右下)サインはわかりやすいイラストに。(右上)思わぬところにコパルのロゴも。見つけた瞬間、「見っけ♡」と思わずクスっとしちゃいます

(1枚目)そろばんのように珠が動かせる手すりは、障がいがない子も誰でも工夫して遊べます(写真提供:コパル)。(写真3,4枚目)サインはわかりやすいイラストに。(2枚目)思わぬところにコパルのロゴも。見つけた瞬間、「見っけ♡」と思わずクスっとしちゃいます

「雨天時や冬期間でも、子どもたちがのびのびと遊べる空間の創出を」と、山形市が立ち上げたPFI事業に基づき建設されたコパル。PFIとは、公共施設の設計から運営まで民間の資金とノウハウを活用し、公共サービスの提供を民間主導で行うことで、効率的かつ効果的な公共サービスの提供を図るというものです。コパルでは民間業者13社がそれぞれを担っています。

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代表 佐藤 奈々子さん

体育館のスロープを抜けると見えてくる大型遊戯場。「はいはいエリア」「とことこエリア」「わんぱくエリア」とワンフロアでゆるやかにゾーニングしている空間

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コパルの遊具には“何歳以上から”という制限がほとんど設けてありません。ロープやネット、すべり台は難易度がグラデーションになっています。乳幼児から小学校高学年までそれぞれの身体能力に合わせて同じエリアで遊ぶことができます。子ども遊戯施設では通常、年齢制限があり、きょうだい別々の遊び場になるところが多いのですが、コパルでは年齢の離れたきょうだいが一緒に遊べるので、親が一緒に見ていられるという利点も。そんなところもインクルーシブです。

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乳幼児と未就学児が一緒に遊べる大型遊戯場。手触りのやわらかい天然素材を使用したベンチは木琴に。五感を刺激する仕掛けや想いがあちこちに感じられます

夏期には噴水の上がる「みずのひろば」のある中庭には、車椅子でそのまま乗れたり、自分で体重を支えられない子も乗れるブランコがあります

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ものづくりのへや_1
ものづくりのへや_2
ものづくりのへや_3
ものづくりのへや_4

県内の印刷会社などから提供された残紙や色見本帳を自由に使い、作品をつくる「ものづくりのへや」。限られた資源の中から「足るを知る」ことで、子どもたちの想像力を育むことができます(左上・写真提供:コパル)

県内の印刷会社などから提供された残紙や色見本帳を自由に使い、作品をつくる「ものづくりのへや」。限られた資源の中から「足るを知る」ことで、子どもたちの想像力を育むことができます(1枚目・写真提供:コパル)

デジタルアトラクションは、実際にリハビリでも使用されているもの。コパルでは障がい児だけでなくみんなで遊べます(有料)。画面に触れると動物が動いたり、デジタルでサッカーをしたり、大人も一緒になってわくわくしちゃうエリア

デジタルアトラクションは、実際にリハビリでも使用されているもの。コパルでは障がい児だけでなくみんなで遊べます(有料)。画面に触れると動物が動いたり、デジタルでサッカーをしたり、大人も一緒になってわくわくしちゃうエリア(写真提供:コパル)

現在1500冊あるという絵本コーナー。運動が大好きな子だけでなく絵本が好きな子も一緒に楽しめるのがコパルの魅力

現在1500冊あるという絵本コーナー。運動が大好きな子だけでなく絵本が好きな子も一緒に楽しめるのがコパルの魅力

食べることも生きる力、食育カフェlittle JAM(りとるじゃむ)

子ども連れでなくても、誰でも利用できるlittle JAM。建物の北西に、その入口があります

子ども連れでなくても、誰でも利用できるlittle JAM。建物の北西に、その入口があります

オーナーの神保雅人さんが、コパルの想いに賛同してオープンしたlittle JAM。山形市香住町にあるSLOW JAMの姉妹店です。こちらは大人のみの利用も可能。羽釜で炊いた特別栽培による「つや姫」を使用したおむすびなどのお食事メニューが人気です。神保さんご自身が以前大病を患い、食の大切さに気付いたということもあり、生産者の顔が見える、安心な地元を中心とした野菜など厳選した素材を使用。無添加・無化調にこだわった、バランスのよいごはんの提供を心がけているといいます。こちらでは「太陽と月のひかり」さんのベビーフードも購入可能。アレルギーに配慮したものもあるそうで、食育の観点からも「みんな一緒に」が考えられています。little JAMでは今後、マルシェや農作体験なども企画しているとのことで、これからも目が離せません。

キッチン_1
キッチン_2
キッチン_3
キッチン_4

コパルの施設内からもキッチンが見えるので、調理の様子を眺めるのも学びに。ベビーカーや車椅子でも入りやすいイートインスペース。テイクアウトにも対応してくれるので、お弁当やドリンク、スイーツを買いにふらっと訪れることもできます(右上・左下・右下・写真提供:little JAM)

コパルの施設内からもキッチンが見えるので、調理の様子を眺めるのも学びに。ベビーカーや車椅子でも入りやすいイートインスペース。テイクアウトにも対応してくれるので、お弁当やドリンク、スイーツを買いにふらっと訪れることもできます(2,3,4枚目・写真提供:little JAM)

りとるじゃむカレー
ミルクソフトクリーム
手づくりスイーツ
りとるじゃむ弁当

(左上)「りとるじゃむカレー」(税込750円)はスパイスが別にトッピングできるので子どもから大人まで大満足。 (右上)山形県産放牧酪農牛乳を使用したミルクソフトクリーム(税込350円)。(左下)SLOW JAMの手づくりスイーツたち。個人的に、カヌレがおすすめです♡ (右下)「りとるじゃむ弁当」(税込950円)は好きなおむすびを2つ選べます。自家製ドライトマトとしらすのおむすび、人参ふりかけのおむすびのどちらも、ほどよい味付け。自然の恵みをかみしめて ※価格は2022年10月1日現在

(1枚目)「りとるじゃむカレー」(税込750円)はスパイスが別にトッピングできるので子どもから大人まで大満足。 (2枚目)山形県産放牧酪農牛乳を使用したミルクソフトクリーム(税込350円)。(3枚目)SLOW JAMの手づくりスイーツたち。個人的に、カヌレがおすすめです♡ (4枚目)「りとるじゃむ弁当」(税込950円)は好きなおむすびを2つ選べます。自家製ドライトマトとしらすのおむすび、人参ふりかけのおむすびのどちらも、ほどよい味付け。自然の恵みをかみしめて ※価格は2022年10月1日現在

生きる力、多様性を認め合い、地域共生を学ぶ場所

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子ども主体のワークショップはもちろん、ベビービクスやベビーマッサージなどママが孤立しないイベントも多く催されています。廃材やペットボトルでお父さんと遊ぶイベントも人気なんだとか(写真提供:コパル)

現在、コパルではLINEによる予約のほかに、当日整理券を毎日配布しているので、オープン時よりさらにスムーズに遊べるようになってきているといいます。
「ママとパパと遊びに来た子どもがまた行きたいと、リクエストされたおじいちゃん、おばあちゃんがコパルに見学にくることも。毎日お孫さんと遊びにくるおばあちゃんもいますよ」と青木さん。「山形には“イクメン”という言葉がいらないと思うくらい、ここでは当たり前にパパと子どもの利用も多いです。車椅子のお兄ちゃんと一緒に遊べてうれしいと喜ぶお子さんの笑顔も忘れられません。そういった誰もが楽しめる施設ができたことは、スタッフとしても、子を持つ親としても、とてもうれしいです」と続けます。
「先日は、山形市民以外でも、子ども連れでない人でも誰もが参加できるマルシェを開催しました。地域の人に子どもたちを見てもらう機会もつくり、地域で子どもたちと、山形の未来を見守れる場所になっていければ」とこれからのことを考えているそうです。

コロナウイルス感染症対策の観点から、2022年10月8日から居住地の制限が解除となり、山形市以外の子どもたちにも開放されたコパル。本当の意味で「インクルーシブ」な―誰もがともに認め合い、一緒に遊べる―場所として発展していきます。子どもたちの楽しい笑い声が、コパルからこれからもっと聞こえてくることでしょう。

コパル

 

(SPOT DATA)
シェルターインクルーシブプレイス コパル

山形市片谷地580−1

食育カフェ little JAM(りとるじゃむ)

この記事を書いた人
みどりかいぎさん

Profile 山形会議のキュレーター。元・書店員。青森生まれ、盛岡・仙台育ち、そして山形へ。今までの引っ越し回数は12回を数える。日々糖質との闘い。レモンサワーがあれば大丈夫。
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