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2021.05.11

山形の魅力を伝えたい。挑み続ける140字の世界

山形県公式ツイッター中の者さん

かいぎさん
山形交響楽団の演奏会も開催されるやまぎん県民ホールにて

山形県章のお面??山形県庁舎をバックに佇むこの方は⋯?

「今話題の”あの人”がラジオに出演するらしい」という情報を得た山形会議編集部は2021年3月13日(土)、YBCラジオ『ウィークエンドスクランブル』の収録が行われているトヨタカローラ山形南一番町店サテライトスタジオへ。すると、いました、いました!視聴者には顔が見えないラジオにも関わらず県章のお面をつけたあの方。あれ?トークの中で「これはお面ではなく、顔です」とおっしゃってます。⋯大変失礼しました。さて、何を隠そうこの方は、山形県公式ツイッター「中の者」さん。県の行政情報のみならず、人間味溢れるツイートが話題となり、そのフォロワー数は都道府県公式ツイッターのランキング7位(2021年4月末現在 都道府県公式のTwitterアカウントまとめサイトより)に上り詰めたほど。今回は、中の者さんのこれまでの道のりを振り返るとともに、謎に包まれた素顔や魅力に迫ってみました。

ラジオ収録中の様子。YBC山形放送の山本浩一アナウンサーと山川麻衣子アナウンサーの質問に丁寧に答える中の者さんの様子から、誠実な人柄が伝わって来ました

ラジオ収録中の様子。YBC山形放送の山本浩一アナウンサーと山川麻衣子アナウンサーの質問に丁寧に答える中の者さんの様子から、誠実な人柄が伝わって来ました

収録の合間にはしっかりと台本をチェック。指には公務員らしく指サックが!

収録の合間にはしっかりと台本をチェック。指には公務員らしく指サックが!

身近な存在だったツイッターの担当に。しかし戸惑う日々・・・

中の者さんがツイッターの担当になったのは2019年4月のこと。「ツイッターは学生の頃から好んで利用していたツールだったので、自分の強みを生かせるかもしれない!と、担当になった当初は意気込んでいました。しかし、いざやってみると個人と行政では、発信する内容や質、ターゲットなどが全く異なり、これは想像よりはるかに大変だと思いましたね」と中の者さん。しばらくは他の業務に忙殺され、各課から届いた情報を事務的にツイッターで流す日々が続いていたのだとか。心のどこかでは「担当になったからには、ツイッターを使ってもっといろいろなことを発信していきたい」という思いを抱きながらも、具体的に行動に移すことができない毎日に悶々としていたそうです。

山形県公式ツイッターは、2011年3月に起きた東日本大震災をきっかけに開設され、同月22日から運用が始まりました

山形県公式ツイッターは、2011年3月に起きた東日本大震災をきっかけに開設され、同月22日から運用が始まりました

ツイッターにある無限の可能性

担当になって2年目のある日、SNSでの情報発信の有効性や重要性について学ぶため、山形県職員を対象としたトークセッションが行われました。講師は、民間企業でツイッターやフェイスブックといったSNSを効果的に運営している“中の人”たち。そのトークセッションを通し、”ツイッターというツールは、手軽で老若男女多くのユーザーがいて勢いがある。そしてなによりお金がかからず、非常に有効な広報媒体であること”を認識したという中の者さん。さらに”活用の方法は無限大で、行政という組織においても、やりようはいくらでもあるな”とも強く感じたそうです。

トークセッション(2019年11月11日)の様子。様々な部署から合わせて約100人の県職員が参加したそう(写真提供:山形県広報広聴推進課)

トークセッション(2019年11月11日)の様子。様々な部署から合わせて約100人の県職員が参加したそう(写真提供:山形県広報広聴推進課)

その時、歴史は動いた!「中の者」爆誕。

トークセッションから数日後、中の者さんは業務で庄内へ出張することに。月山道へ差しかかった時、11月なのに積雪が多く、運転しながら「うわー11月なのにもうこんなに雪積もってるじゃん…」と思ったそうです。いつもならここで終わるところですが、ふと、トークセッションの中で講師の方が話していた”山形では当たり前のことでも、県外の人から見たらびっくりするようなこともある”という言葉が頭をよぎります。「あれ、これってツイートネタになるんじゃない?」と閃き、ギリギリのスケジュールで目的地に向かっている最中でしたが、すぐに車を安全な場所に停め、撮影した雪の画像をツイッターに投稿。すると、あれよあれよとこれまでにない反響を呼び、ついには3,000を超える”いいね”を得ました。この投稿は県外の方だけでなく、県内の方からも「ついにこの季節が来たか。これぞ山形」といった反応とともに大きく注目を浴びる結果に。このことで「投稿する内容次第で、自分でもやっていけるかもしれない」と自信をつけたという中の者さん。事務的な情報発信だけにはとどまらない、様々な“山形の魅力の発信”に情熱を注ぐ「中の者」が誕生した瞬間でした。

中の者さんが爆誕した記念すべきツイート。トークセッションを受け、「何かを変えたい!」と悶々としていた中の者さんの元へ、ツイッターの神様が雪とともに降ってきた、もとい降りてきたのでしょうか

中の者さんが爆誕した記念すべきツイート。トークセッションを受け、「何かを変えたい!」と悶々としていた中の者さんの元へ、ツイッターの神様が雪とともに降ってきた、もとい降りてきたのでしょうか

コロナ禍で考えてほしいという思いを込めたメッセージ

”やりたいこと”と”やるべきこと”が見えてきた中の者さん。その後のツイートも次々と話題を呼び、まさに破竹の勢い。2020年3月31日、コロナ禍で混乱する世の中に向けて中の者さんが投じた、思いの込められたツイートが再び注目を浴びます。

「未知のウイルスで先が見通せない状況で、全国的にデマやいわれのない誹謗中傷に心を痛めている方がいるのを報道で目にしていました。いつもならツイッター上でも面白おかしいウソや冗談で盛り上がるエイプリルフールですが、今回は少し考えてほしいなという気持ちをツイートしました。共感してくださる方がたくさんいて、少し心が温かくなったのを覚えています」と中の者さん。このツイートは、NHKのニュースに取り上げられ、話題になりました。

トライ&エラーを続ける日々。情報収集に目を光らせる

投稿するや否やまたたく間にたくさんの”いいね”がつき、順調にツイッターを運用しているように見える中の者さん。しかし、その裏ではいろいろな物語があるようです。「この投稿はきっと伸びるだろう!と自信を持ってツイートしたものが予想より”いいね”が伸びない…なんていうことは日常茶飯事です。その逆もしかりで、このツイートがこんなに伸びる⁉ということもあります」。ツイートの反応は毎月分析をし、次の投稿時の参考にしているそうです。「トライ(ツイート)してみて、結果がエラー(反応が悪い)なら、次回は少しやり方を変えて再度トライ(ツイート)する、その繰り返しです。一回のエラーで、やっぱり行政には無理なんだ…と諦めることなく、何度もトライしてみる。ツイッターという気軽に使える媒体だからこそ、何度も試すことができるんです」。

具体的な”エラー”について伺うとこんなエピソードが。2020年の2月22日に、ニャンニャンニャンの”猫の日”にちなんで深夜の2時22分にツイートしようと、目覚ましアラームをセットして眠い目をこすりながら投稿したのに、反応は全く奮わなかったそうです。「そりゃあそうですよね。その時間帯、普通の人は誰も起きていませんからね(笑)」と苦笑い。あれこれ趣向を凝らした投稿でいつもフォロワーを楽しませてくれる中の者さんですが、ツイートする時に心がけているのは、「これなら皆さん興味を持ってくれるかな?自分以外の誰かに知らせたいと思ってくれるかな?」と受け手の立場で考えつつ、何より発信する自分自身が投稿を楽しむこと。また誤りや思い込みがないように、同時に個人の独断にならないよう同僚の方と確認しながら文面を推敲しているそう。また、何かあればすぐに撮影できるようにと、カメラ機材を常に持ち歩くなど準備は万全。さらにツイッターを見てくれている方々のため、朝刊チェックに始まり、Webニュースやツイッターのタイムラインなどどんな時も情報収集に目を光らせています。

「ツイートする時は正確さを一番に心がけています」と中の者さん。1日の投稿数は平均して4〜6通ほどだといいます

「ツイートする時は正確さを一番に心がけています」と中の者さん。1日の投稿数は平均して4〜6通ほどだといいます

プライベートについて切り込むと「性別、年齢、家族構成は非公表にさせていただいています。ただ、年齢に関しては、ヒントになるツイートを過去にしているので、ご覧になっていただければ」。とうまい具合にかわされてしまいました。趣味は山形の温泉でゆっくりとすることと、山形の美味しいものを食べることだそうです。どこまでも山形⋯

プライベートについて切り込むと「性別、年齢、家族構成は非公表にさせていただいています。ただ、年齢に関しては、ヒントになるツイートを過去にしているので、ご覧になっていただければ」。とうまい具合にかわされてしまいました。趣味は山形の温泉でゆっくりとすることと、山形の美味しいものを食べることだそうです。どこまでも山形⋯

取材で訪れた先でいい風景を見つけました。早速撮影と投稿の準備!

取材で訪れた先でいい風景を見つけました。早速撮影と投稿の準備!

鶴岡市由良の白山島にて。この日は風がビュービューと吹く中でしたが、フォロワーの方々に白山島の良さを伝えるべく体を張って撮影に臨んでいました

鶴岡市由良の白山島にて。この日は風がビュービューと吹く中でしたが、フォロワーの方々に白山島の良さを伝えるべく体を張って撮影に臨んでいました

これからも大好きな山形の魅力を発信していきたい

投稿内容は“必ず山形に関連するネタ”という揺るぎのないこだわりのもと、日々新たな情報発信に奮闘する中の者さん。「”山形には何もない”という声をたまに聞きますが、私は逆で、山形には生活する上で必要なもの、大事なことがほとんど揃っていると思います。だからこそ大学卒業後、山形に戻ってきたい!と思いました。特に風景は、改めて、落ち着くなぁ…と感じています。身近にのどかな風景や自然がありますし、子育てしている方にとっても非常に良い環境なのではないでしょうか」と山形への深い愛着をのぞかせます。

「また各地域に、住民によって創り上げられ、受け継がれているお祭りや伝統芸能が数多くあります。それは人と人の結びつきが強い証と言えると思います。色々な人と関わって暮らしていけるというのは、私にとっては非常に魅力的なことです。そうした山形県の良さを県内だけでなく、県外の方にも知ってもらえるように、SNSを通し情報発信していくことが重要だと考えています。今後も各地域の旬な情報をお届けしていきたいですね」と自身の目標を語ってくれました。時には縦読み、アスキーアートなどを駆使して我々を楽しませてくれたり、県民が必要な情報を瞬時に発信してくれたりと、県公式ツイッターアカウントを県民に愛され、信頼されるものへと大きく成長させた中の者さん。その活動から今後も目が離せません。

アスキーアートを使用した投稿(写真:左上、左下)や縦読み(写真:右上)斜め読み(写真:右下)の投稿の一部。様々に趣向が凝らされた投稿に今後も注目

アスキーアートを使用した投稿(写真:左上、左下)や縦読み(写真:右上)斜め読み(写真:右下)の投稿の一部。様々に趣向が凝らされた投稿に今後も注目

山形県産木材を使用した名札。二次元コードが大きく読み取りやすい。さすがツイッター主任

山形県産木材を使用した名札。二次元コードが大きく読み取りやすい。さすがツイッター主任

「いつも山形県のツイッターをご覧いただいている皆さん、本当にありがとうございます。皆さんの反応や温かいコメントにいつも励まされています。新型コロナで先の見通せない日々が続きますが、皆さんが明るくなるような山形県の話題や魅力をどんどん発信していきたいと思っています」

「いつも山形県のツイッターをご覧いただいている皆さん、本当にありがとうございます。皆さんの反応や温かいコメントにいつも励まされています。新型コロナで先の見通せない日々が続きますが、皆さんが明るくなるような山形県の話題や魅力をどんどん発信していきたいと思っています」

プロフィール
山形県公式ツイッター 中の者さん

山形県生まれ。2019年11月15日の投稿から登場。趣味はスポーツ全般と出張時や休日の県内美食食べ歩き(ソロ)ツアー。将来の夢は都道府県のSNSで山形をいろんな意味で一番にすること。

勝負メシ 【KAZU 山形県産牛と牛肉ハムの店】

「店長さんの心遣いと人柄が好き」と話す西濱さん。お店に行くときはメニューはすべておまかせにしているそう。上質な肩ロースをさっと陶板で焼いて、特製の甘ダレと卵につけていただく、お店の人気メニュー『焼きすき』をはじめ、美味しい牛肉料理が味わえるお店。
山形県山形市幸町5-2
http://vieh-natural.net/kazu/

【KAZU 山形県産牛と牛肉ハムの店】

この記事を書いた人
たいこかいぎさん

たいこかいぎさん
Profile 山形会議キュレーター。上山市出身。お酒を愛するアマチュア打楽器奏者。広い人脈により、さまざまな調査能力に長けており、情報が早い。敬意を込め周囲は「記者」と呼ぶ。
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