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2022.02.04地域に根ざす総合販売会社として、チームワークで事業拡大へ挑む
山形パナソニック株式会社 代表取締役社長 清野寿啓さん
山形パナソニック株式会社 本社入口にて。パナソニックの広告塔である『Panasonicの店坊や』と一緒にパチリ ※撮影時はマスクを外していただいております
1952年の創立以来、家庭電化製品の販売を主に事業を拡大し地域の豊かな暮らしの創造に寄与してきた山形パナソニック株式会社(以下、山形パナソニック)。創業から70周年にあたる2022年を迎えたいま、同社が描く未来とは―。代表取締役社長の清野寿啓さんにお話を伺いました。
原点の「街のでんき屋さん」から、総合販売会社へ
山形パナソニックの前身は、1952年3月に設立された山形ナショナル電器販売株式会社。松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)が製造する家庭電化製品の卸業務を、山形県内に一元的に行うことを目的に、わずか20名ほどの社員でスタートしました。「家電の卸からはじまった当社ですが、そこから電設資材、さらにはシステム系の商材にまで枠を広げていきました」と清野さん。
家電製品の印象が強い同社ですが、現在の企業活動に目を向けると、その幅広さに驚かされます。具体的には、パナソニックの家電製品の提供・お店づくり支援のほか、一般住宅のリフォームなども請け負う「コンシューマー事業部」、映像・情報・通信などのICTを駆使してさまざまな分野の効率的環境づくりを支援する「ソリューション事業部」、一般住宅をはじめさまざまな施設に電気工事材料や建築資材を提供するとともに、住宅設備機器・空調機器などを提案する「電建事業部」、太陽光発電・省エネ設備やさまざまな施設の音響・映像設備の設計、施工管理を行いながら家電製品の修理も担当する「CS・エンジニアリング事業部」の4つの事業部があり、実に多岐にわたる商材・サービスを提供しています。
3代目社長となる清野さん。会長の伸昭氏は父、創業者の故源太郎氏は祖父にあたります
「創業者は事業を立ち上げ、現会長はその基盤の上に年商100億円を超えるエイアンドシーをはじめとするグループ会社群を立ち上げ、事業を発展させました。次を託された私の時代の使命は何か。それは事業領域の拡大に尽きます」
「今までは取扱商品のラインナップをいかに広げ、得意先の経営向上に貢献していくかが経営課題の中心でした。しかし今後こだわりたいのは、付加価値の追求です。例えば当社が培ってきた設計支援や施工管理の技術力・ノウハウを高めていき、従来は得意先にお任せしていた施主さんへのご提案を、得意先とのコラボレーションにより実現していくことなどが挙げられます。これからは商品ラインナップと商圏の『広さ』に加え、提供サービスの『深さ』、その両輪を強みとして事業を発展させていきたいですね」
2021年6月に仙台市若林区卸町に移転オープンした仙台営業所。家電以外の各部門が県外へ事業展開するための最前線基地としての役割を担います。「『山形』を冠した社名は県外では時にハンデになるかもしれませんが、『山形パナソニック』の名前が東北一円に広がっていくのが社員みんなの夢でもあります」と清野さん(写真提供:山形パナソニック)
人材育成の基本は“安心感”。大切にしたいチームワークと人づくり
どんな企業にとっても、継続的な成長のために必要不可欠な課題である人材育成。山形パナソニックでは、新入社員を2、3年上の先輩社員がマンツーマンで1年間にわたり指導する『チューター制度』を、2008年から導入しています。近年では同社への入社を志望する学生さんが、チューター制度があることを志望動機に挙げるケースも増えているのだとか。
「社会人としての職業観や技術的な素養うんぬんを身につけるのももちろん大切ですが、まずは“ずっとここにいていいんだ”という安心感を与えられるかどうかが何より重要だと思います」
「立場の上の人が、下の人に何かを聞かれた時に、例え明確な答えは持ち合わせていなくとも一緒に考えることはできますよね。昔のように威厳や立場の重みで仕事を教える時代は終わり、今はリアルな対話の場で“ああ、この人すごい”とか“なるほど”と思わせる視点を提供できるかどうか。それが仕事を教える側に試されるのだと思います」
そうした考えは、ご自身の過去の体験に基づいているのだと清野さんは打ち明けます。
2000年当時、会社改革プロジェクトのリーダーを担当していた清野さん。社外のベンチャーキャピタルの方からの指導のもとプロジェクトを進行していたそうです。その方は清野さんの10歳ほど年上。普段は気軽に話しかけることも憚られるような距離を感じる方でしたが、仕事でどうしてもその日のうちに解決したい疑問があり、意を決して電話をかけたそうです。
「電話を受けたその方が開口一番に『電話をくれてありがとう』と言ってくれて。どれほど勇気をふりしぼって連絡したのかを感じ取ってくれたのだと思います。当時は立場が上の人にわからないことを聞くのは、ものすごくハードルが高いことでした。だからこそ聞かれた側は、どんな時でも受け止めてあげなければいけない。誰かがきちんと向き合ってくれる安心感こそが人材育成の基本なのだと、人の育て方・関わり方について自分の中での物差しができた瞬間でした」
「正直さもその人の魅力の一つだと気づいたのが40歳手前、社長に就任するちょっと前のことです。肩肘を張って分からないことを分かるふりをするのをやめてからは、気持ちに余裕を持てるように。社員の皆さんともいろんな話ができるようになったと感じます」
清野さんが大切にする、人との関わりによる安心感。そこで働く社員の方々のチームワークの良さを目の当たりにできるのが、若手社員が企画・出演するYoutube動画『山パナチャンネル』です。パナソニック商品や同社の企業活動などを紹介する目的で2019年に開設されたこのチャンネル。現在までアップロードされた103本の動画は、「わかりやすい」「リアルな声が参考になる」と就活生を中心に評判を呼んでいます。
実際に動画を視聴すると、出演している社員の皆さんが楽しみながら収録にのぞんでいるのが一目瞭然。
「『山パナチャンネル』は社員が自己進化していった形。世間からするとうちのような固いイメージの会社が、今風のノリで情報を発信することに最初は賛否両論ありました。ですが、今では確実に組織の強みの一つになっていると思います」と清野さん。こうした若手社員の方々による“顔の見える広報”が、コロナ禍において大きな役割を果たしていることは、想像に難くありません。
最初は業務終了後に、細々と営業車の中から配信していたという『山パナチャンネル』。過去には社員からの発案で清野さんと若手社員の対談動画の企画も。エントリーしてくれた就活生に向けて限定公開されました
ボトムアップで挑戦する新事業やSDGsへの取り組み
パナソニック商品をメインに扱う同社ですが、ラインナップにはパナソニック以外の商材も。「販売会社の機能として品揃えや商品開発力というのは不可欠なので、新しいビジネスのための商材探しは常に重要なテーマです」と清野さん。その商材探しは、各部門はもちろん、社内プロジェクトや経営企画室、営業本部が主体となって行うこともあります。「社員の皆さんが会議の中で協議・決定したものに対して、私は決裁するという流れですね。小型の電気自動車や電動ハイブリッドバイクに電動キックボード、サウナなどの新商材は、すべて社員の皆さんの起案で始まったものです」。
電気で走るe-モビリティを通じてカーボンゼロ社会への貢献を目指す山形パナソニック。Panasonic 電動アシスト自転車のほかにも、超小型EV自動車e-Apple(イーアップル)、glafit(グラフィット)のハイブリッドバイクなどの取り扱いも開始しました
2021年12月よりフィンランドのHARVIA(ハルビア)社と提携しサウナの取り扱いをスタート。写真は樽型のアウトドアサウナで、自宅の庭や宿泊施設、キャンプ施設などでの利用を想定しています。ほかにも室内に設置できるガラスドアタイプや一人用サウナなど多数のサウナを取り揃えます
展示スペースでは癒しの空間演出も。取材班もサウナに入り本格フィンランド式「ロウリュ」を体験させていただいたところ、一般のサウナよりもヒリヒリせずじんわりとした温かさ。これなら長く入っていられそう(写真提供:山形パナソニック)
サウナの本場フィンランドのEmendo(エメンド)社製のサウナハット、サウナフレグランスをはじめとしたサウナ関連グッズの展示も。こんなおしゃれなアイテムに囲まれたら、サウナタイムがますます楽しくなりそう(写真提供:山形パナソニック)
ボトムアップの風土は社内改革の取り組みにも浸透しています。同社では2012年より働き方改革の全社プロジェクト【Switch】が始動。現在は「業務改革」「人材・職場環境」「ブランドUP」の3つの分科会のもと、さまざまな施策が実行されています。
企業活動がSDGsに直結する部分も多い同社ですが、それと並行し「ブランドUP」の分科会では特に社員個人レベルでのSDGsチャレンジに力を入れています。その一環として、一人ひとりが業務やプライベートの中で実施できる「MY SDGs宣言」をロッカーに掲示。他の人がどんなことを目標に掲げ行動に移しているのか見える化できたことで、書いて終わりではなく継続して取り組むよう一人ひとりの意識が強まったと言います。
ソリューション事業部の皆さん。地域のボランティアへの参加、ジェンダー平等に関することなど、各自が実践したいチャレンジを宣言として掲げています(写真提供:山形パナソニック)
今こそ販売会社としての真価が問われている
山形パナソニックが目指すのは、『真の豊かさ』が実感できる快適な暮らしの環境を、商品・システムを通じてお届けすること―。
「コロナ禍の今だからこそ生活や経営に関するご要望はたくさんありますので、私たちのような販売会社の存在意義が問われています。家庭であれば自粛生活を快適に過ごしたい、法人であればテレワークや在宅勤務の環境構築、デジタルトランスフォーメーション(DX)等のニーズなど。それらを販売店はじめパートナーの皆さまとどのように実現していくのかが私たちのミッションだと考えています」
創業70周年という節目を迎えた2022年、その歩みは盤石なチームワークによって一層輝きを増していくはず。清野さんのお話を聞き、そんな確信が生まれました。
プロフィール
山形パナソニック株式会社 代表取締役社長 清野寿啓さん
山形県上山市出身。山形県立山形東高等学校から日本大学文理学部へ。1993年に松下電器産業(現パナソニック)入社。97年に山形ナショナル電機(現山形パナソニック)に入り、取締役、常務、副社長を経て2013年6月に社長就任。プライベートではインターネットラジオを配信するほか、読書、囲碁、ウクレレ、俳句などを嗜み趣味人としても多忙な日々を送っている。
勝負メシ 「磯辺もち」と山形の秘伝豆で作った「ひたし豆」
「どちらも大好物で、普段から自分で作ります。ひたし豆はいろんな豆を試したけれど、歯ごたえの良い山形の秘伝豆を使うと決めています。常備菜として常に冷蔵庫にストックしてありますよ(笑)」